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環境
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ドイツで太陽光発電が急速に普及した原動力になった制度が、2010年度に国内に導入される見通しだ。これまで約20年だった太陽光発電の投資回収期間が10~15年に短縮。2010年の市場急拡大は必至だ。
(文/金子憲治=日経エコロジー)
自然エネルギーによる電気を電力会社が長期間、固定価格で買い取る制度は「フィード・イン・タリフ(FIT)」と呼ばれる。ドイツでは2004年に 1kWh当たり約60円で20年間買い取る制度が始まった。この条件だと10年足らずで投資回収できるため、大規模な太陽光発電所が次々と設置され、爆発的に普及した。
2月24日というこの時期に、二階経済産業大臣が会見で「日本版FIT」を発表したのは、総選挙を前にした自民党による政治決断だったからだ。これまで経産省は、太陽光発電の普及策として電力会社に一定の自然エネルギーによる電気の導入を義務付ける「新エネルギー等電気利用法(RPS法)」を軸にしてきた。今年に入り、追加対策として設置補助金を復活させたものの、「FITには欠点も多い」として後ろ向きだった。
唐突なFITの導入は、経産省が、総選挙に備えて「日本版グリーン・ニューディール」の目玉を作りたい自民党に押し切られた格好だ。
ただ、二階大臣が「外国のまねでない日本型の新制度」と強調したように、ドイツのFITと違う点も多い。構想では、1kWhの買い取り価格は約50円で期間は10年、そしてドイツと違い事業として太陽光発電を営む場合は買い取り対象にしない。つまり、家庭や公共施設などに設置した太陽光発電の余剰電力が対象だ。
「日本版フィード・イン・タリフ」では、家庭や公共施設が対象で、大規模太陽光発電施設は除外する(写真はイメージ)
コージェネ併用の扱いは?
ドイツのFITの下では、投資効率が高いために太陽光発電が利殖の対象になる一方、電力会社の負担が大きく電力料金が値上がりした。加えて、太陽電池メーカーに対しコスト削減の圧力が弱まってしまった。
日本版FITでは、投資効率を下げてメーカーに対するコスト削減圧力を維持しつつ、余剰電力に限定して「もうけのための太陽光発電」を排除。その上で買い取りによる電力会社の費用負担を薄く広く電力料金に上乗せする。経産省の試算では、毎月の電力料金は1世帯当たり数十円~100円程度上がる見込みだ。
ドイツのFITに比べ衝撃度は小さいものの、それでも国内市場拡大への効果は大きい。これまで電力会社が自主的に1kWh当たり24円で買い取ってきたのに比べ、国の制度として2倍の約50円で買い取ることは投資回収の短縮化を保証する。国や自治体の設置補助金を併用し、設置条件が良ければ、投資回収期間が10年を切るケースも出てきそうだ。
FITの買い取り価格は初年度を最高に毎年、徐々に下げていく(設置した年度の買い取り価格を10年間固定)ため、制度導入時には、先を競って既築住宅への設置が急増し、新築住宅への太陽電池設置が標準化する可能性が高い。
今後、細かい制度設計として課題となるのが、今年販売が本格化する家庭用のガスコージェネレーション(熱電併給)システムと太陽光発電システムを併設した場合の「余剰電力」の定義だ。家庭内の電力需要は、優先的に自家発電機の電気で賄い、太陽光発電による電気は少しでも多く売電した方が、投資回収は早まる。ただ、その分電力会社の売り上げは減り、ガス会社の販売が増える。両業界の思惑がぶつかるだけに調整は難航しそうだ。
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