出典:http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200901150009a.nwc
※政府統計などを基に作成(写真はブルームバーグ)
■国産VS.国産 世界を照らせ
太陽光発電事業への新規参入や増産の動きが活発化している。政府は太陽光
発電の累計導入量を2010年までに482万キロワット(07年推定で約2
00万キロワット)と2.4倍に拡大する計画を掲げるほか、世界的にみても
地球温暖化対策として導入機運が急速に高まっている。太陽光発電は太陽電池
をはじめとして日本が技術面で世界をリードすることから、景気後退が深刻化
する中で経済活性化の起爆剤になるとの期待も高まっている。
◆米国新規需要狙う
東芝は今月5日、太陽光発電システムに本格参入すると発表した。同社の推
計によると、家庭用を除いた電力・産業用太陽光発電システムの世界市場規模
は、08年度見込みの約1兆2000億円から、15年度には倍増に近い2兆
2000億円にまで膨らむとみている。同社は太陽電池の製造は手がけていな
いものの、発電設備や電力系統システムなどで強みを持ち、蓄積した技術や実
績など「総合力」を生かせると判断した。同事業を統括する専門組織をすでに
立ち上げており、15年度には約2000億円の売上高を達成する方針だ。
仕事始めの日の東芝の発表によって、09年は太陽光発電の本格普及の年に
なるとの予感が高まる。もちろん、心臓部となる太陽電池メーカーもすでに続
々と増産を表明している。
世界トップクラスをいくシャープは、堺市に建設中の太陽電池工場の稼働時
期を、当初の来春から前倒しする検討を始めた。「正式に決まっていないが、
09年中の稼働に向け努力している」(同社幹部)という。20日に就任する
オバマ米新大統領は環境・エネルギー政策を重視する方針を打ち出しており、
これに伴う米国での新規需要を取り込むのが狙いとの見方もある。
シャープは葛城工場(奈良県葛城市)で昨年10月から第2世代の薄膜太陽
電池の量産に入っており、このための新ラインに約220億円を投じた。同工
場の薄膜太陽電池の年産能力は16万キロワットと、従来(1万5000キロ
ワット)の10倍強に拡大。主流の結晶系と合わせた年産能力は71万キロワ
ットに増強される。
薄膜型は、結晶系に比べて太陽光を電力に変換する効率が低いのが難点だが、
原料であるシリコン使用量が少なくて済み、低コストなのが特徴。同社は、変
換効率でも業界最高水準の9%を達成しており、相次ぐ増産は需要拡大への自
信ともいえる。
実際、海外展開も加えて薄膜太陽電池の年産能力を600万キロワットまで
高める構想を掲げる。その一環として今春、イタリア最大の電力会社、エネル
と共同で合弁会社を設立。12年末までに計約19万キロワットの複数の太陽
光発電所を建設する計画だ。
◆投資続く“聖域”
パナソニックの傘下入りが決まった三洋電機も、石油元売り最大手の新日本
石油と共同で次世代の薄膜太陽電池を開発、生産する新会社を設立するなど、
同事業に資源を集中的に振り向ける方針。そもそもパナソニックが三洋を子会
社化しようとした動機の一つは、「三洋が優れた太陽電池技術を保有していた
ため」(関西財界)との見方がもっぱら。
三洋も当初から、太陽電池を二次電池(充電池)と並ぶ中核事業に掲げてい
た。中長期的に石油依存からの脱却を志向している中東など太陽光発電のニー
ズの高い地域で、新日石やパナソニックの販売ルートを活用しながら販売を拡
大する考えだ。
このほか、京セラや三菱電機など太陽電池大手も相次いで増産に乗り出して
いる。世界の太陽電池に占める日本メーカーのシェアは約5割だが、量産によ
ってコストをさらに低下させ、シェア拡大を狙う。
「太陽電池関連事業がこれからの牽引(けんいん)役」-。化学業界などで
もこう強調するメーカーが増えている。関連部材を手掛けるカネカは、10年
に国内の生産能力を2倍以上に引き上げるほか、11年には約200億円を投
じて欧州で新工場を稼働させる。太陽電池の原料となるシリコン材料やフィル
ムメーカーなども能力増強に乗り出しており、景気減速による投資計画縮小の
嵐の中でも、太陽光発電関連は“聖域”となっているようだ。
◆12年に市場4倍
各社を太陽光事業に駆り立てるのは、日本だけでなく、ドイツや米国など先
進各国もこぞって拡大計画を打ち出しているためだ。民間調査会社の富士経済
によると、太陽電池や発電に必要なシステムなどの世界全体の機器市場は、1
2年に07年比3.9倍の4兆6751億円に拡大すると予測している。
日本も昨年11月、「太陽光発電導入拡大のためのアクションプラン」を発
表。導入量を20年までに10倍、30年までに40倍に拡大する方針を明確
にするとともに、導入促進のための助成措置も復活させた。ある政府関係者は
雇用情勢が急激に悪化する中で、「成長性が高い太陽光発電関連産業を後押し
することで、雇用を創出したいという狙いもある」との考えも漏らす。
政府助成では13日から、一定の条件を満たした太陽光発電システムに対し、
1キロワット当たり7万円を交付する制度が再スタートしたばかり。また、太
陽光発電を設置する新築住宅についても、最大5000万円までの借入金の1
%を所得・住民税から控除するなどの措置も講じる。経済産業省は08年度は
3万5000世帯、09年度は8万5000世帯に設置されると期待する。
無尽蔵の太陽エネルギーを活用するビジネスも“無限の広がり”をみせそう
だ。
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