2008年6月25日水曜日

電池が軽い・薄い・曲げられる!期待の「太陽電池」が量産化



http://cmad.nikkeibp.co.jp/bin/checker?mode=4&mo=11&m=23659&d=0&e=0&s=0&c=&et=20080702040000&q=11979&o=87&url=http://business.nikkeibp.co.jp/article/pba/20080619/162725/

従来の太陽電池はガラス板を基板にした製品が主流だったが、同社はプラスチックフィルムを基板に用いることで、薄くて軽量で、曲げられるフィルム型太陽電池の開発に成功した。これにより、太陽光発電装置の設置場所が格段に広がる。さらに製造法に関しても、カメラのフィルム巻き取り機構のように、材料のフィルムをロールから引き出し、シリコン層を製膜し、ロールに巻き取るという「ステッピングロール方式」のプロセスを開発した。小規模な工場でも低コストで大量生産が可能になり、大幅なコストダウンが期待できる。太陽光発電システムは無尽蔵な太陽エネルギーを利用し、二酸化炭素を排出しないので、温暖化防止の切り札として期待されている。その普及を加速させる画期的な技術である。

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高野章弘氏 (40歳)Akihiro Takano制御システム本部太陽電池統括部熊本工場 開発部次長
【会社概要】
富士電機システムズ 東京都品川区 (熊本工場:熊本県南関町)
設立 1923年8月 資本金 250億円 従業員数 5149名(2007年3月現在)
ワンポイント 制御、環境、電機、発電の4事業を柱とする研究開発型のメーカー
【その他の受賞メンバー(五十音順)】
清藤真次、坂井亮平、榊原康史、下沢慎、反田真之、塚原祐二、中原浩介、布野秀和、横山康弘
●重くて厚いガラスから軽くて薄いプラスチックへ
 太陽光発電システムは、二酸化炭素を排出する火力発電や、危険な放射性物質が出る原子力発電と異なり、無尽蔵な太陽エネルギーを利用し、何も排出しない極めてクリーンな発電システムである。その特性から、地球温暖化防止と省資源を実現する切り札のひとつとして、期待されてきた。近年、太陽電池の市場は急速に伸び始めているとはいえ、もともとのパイが小さいので普及率はまだ決して高くはない。「太陽電池の普及を阻んできたのは高価格であることが原因。また、ガラス基板の製品は重量が重いこともネックになっています」一般家庭用の太陽光発電システムは最低でも200万円以上かかり、発電(売電)でもとを取るのに10~20年かかるのが普通である。そこで富士電機システムズでは、10年以上前から重いガラス基板ではなく、軽いプラスチックのフィルムを基板に使う研究に取り組んできた。94年に開発チームのリーダーに抜擢されたのは、当時、大学院の博士課程を修了したばかりで27歳だった高野さんだった。

保護層が張られていない出荷前の製品。太陽電池層には、地球上に無尽蔵に存在する安価なアモルファス(非結晶)シリコンが使われている
 「その当時、弊社にはガラスを基板として扱うノウハウはいくらでもありましたが、プラスチックフィルムを扱った経験はまったくなく、ゼロからのスタートでした。ガラスと違ってプラスチックは熱に弱いが、太陽電池のシリコン層をフィルム上に製膜するには温度を300℃まで上げる必要がある。温度変化で伸び縮みするので、しわができたりシリコン層がはがれたりして、一筋縄でいくものではなかったのです」開発チームに与えられたテーマは、プラスチックフィルム基板の太陽電池開発だけではない。同時に低コストの製造方法も求められた。材料として納品されたフィルムのロールをセットしたら、そこからフィルムを引き出してシリコン層を製膜し、電極を張り付け、またロールに巻き取って製品として出荷する。カメラのフィルムのコマ送りのような機構で、可能な限りプロセスを減らし、製造コストを下げる必要もあった。「どこがブレークスルーだったかと問われると、答えるのは難しい。プラスチックフィルムの扱い方について、十数年かかってトライ&エラーを繰り返し、そこから得られた多数のノウハウを集積させたと言うほかないのです」
●劇的な軽量化と薄型化を実現。製造コスト削減も
開発に着手してから11年後の2005年、フィルム型太陽電池の開発が完了し、製造法も確立した。でき上がった製品は、厚さわずか1ミリメートル、重量は一般的なガラス基板製品の約10分の1と、劇的に軽量化・薄型化された。さらにフィルム基板にしたことで、最小半径1センチメートルまで曲げられるようになった。これにより、これまで建築強度の問題や屋根の形状などが原因で太陽電池パネルを設置できなかった場所にでも、取り付けられるようになったのである。翌2006年には、熊本県に新開発のステッピングロール方式を採用した製造工場を建設し、量産をスタートした。他の太陽電池メーカーのほとんどは単結晶や多結晶のシリコンを使った太陽電池を製造している。が、同社は薄膜のアモルファスシリコン(非結晶シリコン)を採用している。単結晶シリコンに比べると発電効率は若干低いが、原料は地球上に無尽蔵といえるほどあって価格が安い。夏場の高温時でも発電効率が下がらないのが特徴で、年間を通した発電量では、発電効率ほどの差がつかないという。大量生産するうえでネックになるものは何もない。現状ではまだ生産規模が小さいため、ガラス製品と同程度の価格にとどまっているが、大量生産が可能になれば価格は今より下がるはずである。

最小半径1cmまで曲げられるフィルム型電池。重さはガラス基盤製品の約10分の1で、平面だけでなく曲面にも張り付けられるのが大きな特徴
「国の政策では、2030年までに太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー発電で、総電力需要の1割をまかなうことが目標とされています。それには日本の国土の0.1%の面積で太陽発電を行うだけでいいのです」

 最近ではドイツを始めとする欧州国からの需要が急増しており、09年までに生産能力を3倍に増強することを決定したばかり。同社のフィルム型太陽電池の普及が、人類を地球温暖化や異常気象から救う日がやって来るかもしれない。

【その後の動向】

以前にも増して社外講演や原稿執筆の依頼が来るようになった。「自社の技術を、多くの人たちに紹介するまたとない機会に恵まれました。また、プロフェショナルが集まる場での講演は、非常に勉強になります」とその喜びを語る。現在は、熊本工場(太陽電池専門工場)の既存の生産ラインの安定稼動を進めるとともに、生産能力の増強に向けて努力をしている。ちなみに高野氏の夢は、生産ラインを次々に増設して、太陽電池製品を世の中により多く送り出すことで、「地球環境に自分なりに貢献していくこと」。夢の実現に、また一歩近づいたようだ。








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