http://jp.ibtimes.com/article/biznews/080625/20848.html
http://www.mizuho-ir.co.jp/column/kankyo080624.html
低炭素社会への転換と導入量世界一の座の奪還へ:
太陽光発電システムへの期待と現状 2008年6月24日
太陽電池とは、太陽光エネルギーを直接電気エネルギーに変換するもので、今から50年以上前にアメリカのベル研究所で発見された技術である。その当時は、将来の太陽エネルギー利用社会の到来を予見・期待した研究者もいたかもしれないが、「半導体の性能を利用した新しい技術」という研究者の興味の範疇であったのかもしれない。けれども、その後の世界中の研究者による血の滲むような努力によって、今では、エネルギー問題や地球環境問題の解決に貢献する有望な技術の一つとして、世界中、少なくとも先進諸国では認知されるようになっている。産業立国であり、かつ、国産のエネルギー資源に乏しい日本は、いち早く、この太陽電池を発電システムとして利用するための技術開発に取り掛かり、個人住宅の屋根等に設置した太陽光発電システムを既存の電力系統(電力会社の電線)と接続し、発電した電力が自家消費を上回る場合には電力系統に送り出す(逆潮流)という利用形態(系統連系)を世界で初めて技術的に確立し、実現した。そして、資源エネルギー庁による強力な支援策も相俟って、戸建住宅への導入が進むようになり、今では、統計上は、戸建住宅の60~70件に1件は太陽光発電システムを搭載していることになる。日本は、技術面でも、導入面でも世界を牽引する太陽光発電先進国であり、そのことは今でも変わりはないが、ここ数年、その地位が安泰ではなくなってきている。太陽光発電システムの国別導入量は2004年までは日本が世界一であったが、住宅用太陽光発電システムに対する国内助成事業の終幕、それと時期をほぼ同じくして強力に推進され始めたドイツのフィード・イン・タリフ(太陽光発電等による発電電力を高価で買い取る制度)によって、2005年以降、導入量世界一の座はドイツに譲ってしまっている。生産量自体は07年においても日本は依然として世界一の座を維持してはいる(世界生産量における日本のシェアは06年:37%、07年:25%)が、企業別生産量首位の座もドイツ企業に明け渡してしまった。このような日本の停滞とドイツの加速的成長の理由はどこにあるのだろう。生産量については、太陽電池原料となる多結晶シリコンの供給量の不足という要因も大きいが、国内市場の不活発さが原料確保や製造設備への投資意欲にも影響してしまったものと考えられる。フィード・イン・タリフのおかげで多少高価であっても購入してくれるヨーロッパ市場への出荷が優先され、さらに、日本のユーザーが期待するような価格低下が見られなかったことが原因であろう。だとすると、日本の太陽光発電が世界一であり続けるためには、国内市場をいかにして活性化させるかが、大命題ということになる。住宅用太陽光発電システムの価格は、資源エネルギー庁による助成事業が開始された1994年には、標準的な3kW程度のシステムで約600万円という非常に高価なものであった。その後、国内メーカーによるコストダウンが急速に進み、今では、その当時の3分の1(3kW程度のシステムで約200万円)にまで価格が低下している。この太陽光発電システム価格の低減は目を見張るものがあり、「コストダウンと導入普及を同時に実現した優れた政策」として内外で一定の評価を受けている。その一方で、海外のあるエネルギー経済の専門家は、こうも指摘している。すなわち「助成事業開始当初は、ユーザーが負担する費用(システム価格から助成額を差し引いた額)が徐々に低下していたが、ある時期から販売価格と助成額がほぼ等しく低下し、ユーザー負担額はほとんど変わっていない。この結果、太陽光発電システムは1セット200万円、という相場観ができあがってしまったのではないか。この値段は日本では一般消費者に普通に受け入れられるほどに安価なのか?」残念ながら、その答えは「No」であろう。太陽光発電システムは、全ての国民が自ら主体となって導入することができる「新エネルギー」である。そして、太陽光発電システムの最も特徴的な付加価値は、CO2等を排出しないこと、すなわち、設置者にとっては「環境への貢献」ということになろう。けれども、今の国内太陽光発電システム市場の停滞振りを見ると、この付加価値は日本国民にはまだまだ浸透していない、浸透していてもその評価は政策立案サイドが思っている以上に低い、ということになろう。太陽光発電システムが、より多くのユーザーをひきつけるためには、製品を製造・販売しようとする主体は、これまで以上の一層のコストダウンを実現すると同時に、より多くの付加価値を見出し、与えることが必要である。また、国策として導入を促進するのであれば、それに匹敵するような政策的な先導が必要なはずである。今年7月の洞爺湖サミットでは、地球温暖化問題への解決に向けた対応策が最も重要なテーマとなっており、開催国である我が国は『2050年までに温室効果ガス排出量を半減する「Cool Earth 50」』を提唱している。この実現のために策定された「Cool Earth ―エネルギー革新技術計画」では、重点的に取り組むべき21の革新技術の一つとして「革新的太陽光発電」を掲げている。また、先ごろ示された「福田ビジョン」でも、低炭素社会への転換のための主要な方策の一つとして『太陽光発電世界一の座を奪還するため、導入量を2020年までに現状の10倍、2030年には40倍に引き上げることを目標として掲げたい』との方針が示されている。現在、この方針を受け、住宅用を中心とした太陽光発電システムの大量導入の実現に向けて講じるべき新たな支援策が検討されている。今のこの停滞した国内市場に喝を入れ、導入量世界一の座の奪還、そして低炭素社会への転換に向け、日本発太陽光発電システムの新たな飛躍が実現することを期待したい。(環境・資源エネルギー部 河本 桂一)
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