2008年12月14日日曜日



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電力会社が相次いでメガソーラー事業に参入
2008年6月、電力会社として初めてメガワット級の太陽光発電事業進出を公表したのが関西電力だ。同社のメガソーラー計画は、シャープ、堺市と共同で、2カ所で建設を進めるメガソーラー発電施設からなり、発電容量はあわせて28MWに上る。このうち外部への電力供給を目的とする「堺第7-3区太陽光発電所(仮称)」は、堺市西区の産業廃棄物埋立処分場に建設される。総事業費は約50億円、使用する太陽電池パネルは約7万枚にのぼり、一般家庭約3000軒分にあたる約10MWの発電能力を持つ。2010年度から部分的に竣工し、最終的な完成は2011年度を予定している。

関電の発表から2カ月後の8月、九州電力が福岡県大牟田市の港発電所跡地に、3MWのメガソーラー施設を建設すると発表した。計画では2009年度に着工し、2010年度の竣工を予定している。さらに10月には、東京電力も神奈川県川崎市の浮島と扇島の2カ所に、合計出力約20MWの太陽光発電所を建設すると発表。太陽光発電所としては国内最大級となり、年間の発電電力量は一般家庭5900軒分の使用電力量に相当するという。また、12月に入り、中部電力が愛知県武豊町に7MWの「メガソーラーたけとよ発電所(仮称)」の建設を公表した。

電力各社によるメガソーラー建設の動きは、2008年に入って急速に活気づいてきた。太陽光発電の大規模導入に対して慎重な姿勢をとってきた電力各社が自ら発電事業に乗り出してきた背景には、北海道・洞爺湖サミットの開催による環境意識の高まりと、「福田ビジョン」をはじめとする、国を挙げての太陽光発電の導入姿勢がある。こうした国の動きに応えるように、電力会社10社からなる電気事業連合会は、2008年9月、業界を挙げて大規模太陽光発電所の設置に取り組み、2020年度までに電力会社10社で約140MWの発電所を建設する計画を発表。メガソーラー級の発電所を全国30地点で建設することを明らかにしている。
太陽光発電の復権へ
進む導入支援策
世界の太陽光発電ビジネスのけん引役として、日本は長年、生産量や導入量で世界首位を維持してきた。ところが、ここ数年は、成長著しい欧州や中国に押され気味で、2005年には累積導入量で、2007年には生産量でもドイツに世界一の座を明け渡した。

太陽光発電のシステム技術の第一人者である東京工業大学 統合研究院 黒川 浩助 特任教授は、日本の太陽光発電市場が冷え込んだ理由を、「2005年度に住宅用設置補助制度がなくなったことに加えて、丁度そのタイミングで、フィード・イン・タリフ制度を取り入れた欧州マーケットが一気に膨み、各企業が利潤の大きい海外市場を主戦場としたため」と指摘する。

さらに2007年度は太陽電池生産でも急速に存在感をなくし、2006年度は世界のほぼ半数を占めていたシェアが、一気に4分の1まで縮小した。海外需要が急増するなかで原材料のシリコンが不足し、日本のメーカー各社は作りたくても作れないという状況に陥ったためだ。7年間にわたり生産量で世界首位を独走してきたシャープも、ドイツのQ-Cells社に世界一の座を明け渡している。

国内市場が伸び悩み、海外企業との市場競争でも後手を踏み始めた日本は、ついに2008年に入り、国を挙げて太陽光発電の復活プロジェクトに乗り出した。

2008年6月、福田前首相が、洞爺湖サミット直前に発表した福田ビジョンでは、「太陽光発電の導入量を2020年までに現在の10倍、2030年までに40倍に増やす」とし、メガソーラーの全国展開や住宅の7割に太陽光発電システムを設置することなどを盛り込んでいる。また、同月に発表された資源エネルギー庁の「緊急提言」や、7月に閣議決定した「低炭素社会作り行動計画」では、3~5年以内に太陽光発電システムの価格を半額にすることを目指して導入支援を検討するとした。

一方、具体的な導入措置として、経済産業省は太陽光発電の開発・導入促進に対する予算を大幅に増加。2009年度概算要求では、2005年に打ち切られた住宅用設置補助制度の再開に約238億円を計上。さらに2008年度の補正予算に90億円を盛り込み、2009年1月には1kWあたり7万円の補助がスタートする。導入支援は個人住宅だけに留まらない。新エネルギー等導入加速化支援対策費補助として、工場やビルに導入するメガソーラー等への補助も、約400億円に拡充している。

さらに11月には、経産省と文部科学省、国土交通省、環境省が合同で、太陽光発電導入拡大のためのアクションプランを作成。事業者と地方公共団体の連携を通じたメガソーラー建設だけではなく、道路や鉄道、空港などの公共施設でも太陽光システムを大規模に導入する計画を明らかにしている。

このような導入政策が進むなかで、電力各社も自らがメガソーラー事業を進め、太陽光発電普及に備えようとしているわけだ。


普及を目前に控え
電力各社が安定供給への道を検証
2008年に電力会社が太陽光発電事業で名乗りを上げるまで、日本のメガソーラー普及は世界に比べて立ち遅れていた。日本の太陽光発電といえば、住宅向け設備がほとんどで、メガワット級の発電施設は、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が研究委託している北海道稚内市と、山梨県北杜市などわずかなケースしか存在しない。それも事業用としてではなく、事業化に向けたノウハウを積むための実証研究施設の位置づけだ。

2008年時点で日本最大級の太陽光発電容量5MWを誇る、稚内メガソーラー施設。北海道電力 太陽光発電プロジェクト推進室長の三輪修也氏は、本件の研究目的を、「太陽光発電に伴う系統の安定化や、蓄電池の併用による送電量の平準化などの実証を重ね、事業化に向けて電力の安定供給への実績を積むこと」だと話す。

低炭素社会実現の柱として、新エネルギー供給の中核に置かれた太陽光発電は、その将来性が期待される半面、事業化に向けての課題も多い。

他社に先駆けてメガソーラー計画を発表した関西電力。グループ経営推進本部 新エネルギー発電推進グループの中島宏氏も、「電力会社の使命は電力の安定供給。太陽光発電にどれだけの負荷変動があり、火力や原子力といった既存電力のバックアップをどれほど必要とするかなどを検証し、事業化に向けたノウハウを積む必要がある」という。
「簡単に実現できる話ではない。そのためにも、今から、メガソーラー事業化のために実証を重ねていく」と中島氏は強調した。

太陽光発電普及を目前に控えた電力会社が、安定供給への道を検証し始めた2008年。来年以降も普及・事業化に向けた動きが期待される。




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