http://www.news.janjan.jp/government/0808/0808124437/1.php
地球温暖化対策で大事なのは、太陽電池の設置量ではなく発電量なのです。日本で太陽光発電の普及がすすまないのは、固定価格買取制度(FIT)という積極的な支援策がなく、設置時の補助金という従来型の発想に囚われているからなのです。
先日、「マスコミでは太陽光発電が取り上げられない日は無いのに、地方では太陽光発電の設置業者が倒産している」という表題で、日本政府の支援策の失敗で日本の太陽電池の市場が縮小しているとお伝しました。
これに関して日経エコロジーの取材に、その失敗した政府の担当部署である資源エネルギー庁新エネルギー対策課の課長さんが取材に答えている。日経エコロジーの記事(※)を逐次参照しつつ、何が問題なのかを明らかにしていきたい。(※ 【自然エネルギー】 太陽光発電が税制優遇対象に「5年で半額」目指しコスト削減 (2008年8月12日火曜日)日経エコロジー)
【政府は太陽光発電の普及率を飛躍的に高める強化策を打ち出す。価格を3~5年後に半額にすることを目指し、税制優遇などの施策を講じるほか、企業のコスト削減努力を今まで以上に求めていく構えだ。(文/山根小雪=日経エコロジー)】
何だかずれています。目的は、環境に負荷を与えない電力の生産です。太陽光発電の普及率というスタティックな数字ではなく、実際に日々、使われる電力の中で、どれだけそうした自然エネルギーが役立ってくれるかなのです。そして、それによって何よりも国民の「安心安全な暮らし」が支えられる筈なのです。
【福田首相が洞爺湖サミット直前に発表した「福田ビジョン」をはじめ、政府の太陽光発電の普及強化策が一斉に明らかになってきた。資源エネルギー庁の緊急提言には、「3~5年以内に価格を半額にしたい」という野心的な目標も盛り込んである。この目標は、7月29日に行動計画として閣議決定された】
この緊急提言は、7月の29日にパブリックコメントが締め切られたもので、その纏めも終わっていない段階で、この目標を勝手に閣議決定したというのは、あまりに拙速な対応である。というか、この緊急提言自体が、既得権益を守る為に、これまで自然エネエルギーの普及を阻んでしまったRPS法などの手直しとPPP原則(汚染者負担の原則)を無視したグリーン電力制度などのボランタリーな形で、不公平不公正を見逃す仕組みで問題の先送りをしようとするものでした。
【緊急提言の発表後、太陽電池の買い控えが起きた。2005年度に終了した補助金が復活し、半額で購入できるようになると踏んだ消費者が多かったのだろう。だが実際には、「いったん終了した補助金を同じ枠組みのまま復活させるのは不可能だ」(資源エネルギー庁新エネルギー対策課の渡邊昇治課長)】
そもそも、設置時補助金制度自体が、設置年度毎に負担の不公平を生み不正受給の温床になるなどの、不公正を生む問題を抱えていたものでした。そして、最後の年は1kWあたり2万円、6~10万円程度の補助金は実に非効率で、こんな額なら値引きしたほうが面倒が無くていいと良いと、その分だけ値引きした業者すら居ました。それに、太陽光発電装置が150~250万円もするものですから、これは合い見積もりをとれば下がる価格でした。マーケットメカニズムというのは本来、こうした場面で働く仕組みです。
【政府の補助制度としては、国土交通省が実施している住宅ローン減税の対象に太陽電池を加えるといった税制優遇措置になる公算が高い。例えば、300万円の太陽光発電システムに住宅ローン減税の枠組みを適用すると、合計で数十万円の優遇になる。「税率と上限額によって優遇の度合いは変わる」(渡邊課長)】
既に設置したものにはこの制度の恩恵はありませんね。安くなってからの人たちが優遇される。如何にも、太陽光発電市場を作る為の施策です。
【政府の狙いは、普及率の向上とともに、企業にコスト削減努力を求めることにある。この2年で太陽光発電の世界市場は2倍以上の成長を遂げたが、価格はそれほど下がっていない。渡邊課長は、「市場が成長して価格の下がらない商品は珍しい。欧州の普及推進策のせいで、価格が高いままでも売れるから一向に安くならない」と憤る。政府の設置補助制度は、コストが下がるまでの買い控え対策との位置づけだ】
普及率の向上って何なんでしょう? 大事なのは○○kW設置されましたという数字ではありません。◇◇◇◇kWh発電しましたという成果です。それがそのままCO2を排出しない事になるのです。地球温暖化対策で大事なのは太陽電池の設置量ではなく発電量なのです。
しかし、今の日本の支援制度では、余剰電力として電力会社が買った分しか分らないRPS法にしろ、最近持て囃されている自家消費分の環境価値を売ってしまうグリーン証書取り引きにしろ、何れも正しい発電量はカウントできないのです。それはFIT(固定価格買取制度)によって全量がその評価の対象になるという形にしないと、誰もそんな報告を上げてくれる訳がありません。
そもそも、社会全体の環境を良くする為に、一部の人たちに過分なコスト負担をお願いする仕組みでは上手く行く訳がありません。社会にとって有用な価値を生み出すというのなら、それ相応のお礼をするのが当然です。
赤字の事業にだって公的な資金を出す場合は国債や公債を発行するのです。ならば、新たな価値を社会に導入する事業を「赤字でおやりなさい」という事自体がおかしな事だと気が付かねばなりません。これは、命をささえるお米を作ったら赤字になる、今の農業と同じ構造的問題があるのです。
【太陽光に政府の支援が集中
関西電力は大阪府堺市の産業廃棄物処分場跡地に1万kWの太陽光発電所の建設を決めた。
一連の政府方針で、日本の自然エネルギー支援策は、太陽光に集中する方向性が明確になってきた。東京工業大学の柏木孝夫教授は、「立地の制約が少なく、日本企業が高い技術力を持っている。さらに、太陽光の普及で各地の土木業者に金が回るため、地域振興策にもなる」と説明する。公共事業の新しい形が、太陽光発電の普及で開けるわけだ】
多分、これは海外でのFITによる支援で進むメガクラスのソーラーパークを見て慌てて、メガソーラーを国内でもという(お馬鹿な)事を言った前経産大臣甘利くんの発言に過剰反応した、関電とシャープさんのことですが、柏木さんも単にこれを土建屋発想での公共事業として見てる訳で、資金効率を考えれば、如何に馬鹿なプロジェクトであるかは述べていません。
半額補助でやると、1kWあたり100万円程度という費用が掛かるNEDO事業では10000kWでは100億円掛かるわけで、半分を補助金で出すとなると50億円も公金を支出せねばならないのです。
これを家庭用でやるなら、それこそ問題の多い設置時補助金でも1kW2万円で済むのですから50億円で10倍の設備が設置されるでしょう。税金の使いかたとしてはどちらが資金効率が良いでしょう?
さらに、これを一過性のものではなく1kWhにつき20円を支援する成果評価での原資とするなら、2億5000万kWh設備容量では25万Kwつまり、25倍の発電設備容量を一気に導入させられるのです。勿論、これは柏木氏が言うように各地の設置業者に金が廻る地域振興にもなるし、さらに設置した人たちへもお金が戻りますから、それが地域経済に及ぼす経済効果はもっと大きいでしょう。
大きな土木業者に金が行くよりは,もっと小規模な事業者にお金が廻るほうが余程、地域経済には効果があります。
実に不安定な電源(と電力会社は言う)を一気にこうして集中して設置するほうが余程、電力の系統には不安定要因になる筈なんですが……。
【こうした状況のなか、これまで電力送電網への影響を理由に自然エネルギーの普及に消極的だった電力業界にも動きが出てきた。関西電力はシャープと大阪府堺市と共同で、20haの産業廃棄物処分場跡地に、自ら1万kWの太陽光発電所を建設すると発表。2010年にも発電を開始する。関西電力グループ経営推進本部の竹中秀夫マネジャーは、「原子力が基軸なのに変わりはないが、自然エネルギーをやらないでは済まない雰囲気が出てきた」と漏らす。政府が強力に推進し電力会社が前向きになれば、太陽光発電の普及に弾みがつく可能性もある】
小さいものも集めれば大きくなります。それに、分散してそうしたものが導入されれば、いざという時にも安全です。一気に壊れる事もありません。原子力は柏崎刈羽のように巨大地震一発で丸一年以上も全く電力を供給する事が出来ておらず、安定供給が聞いて呆れる状態です。
それに、ピークがどんどん高くなる日本の電力需要には、そうした夏の昼間の需要期に電力を作ってくれる設備のほうが余程、社会的な価値があります。こうした場合に供給される電力の価値は1kWh30円以上、場合によっては100円を超えてしまっているのです。ならば、そうした時にも役立つ電力を生み出す太陽光発電こそが、この日本には最適でしょう。
わざわざ遠くに作らなくても空いている屋根があるならそこで作ったほうが効率も良いでしょうし、その分、影になるなら屋上が焼けることも無く、無駄なエアコンの消費電力も下げられます。
それに、産業廃棄物処分場には燃料作物を栽培しても良いのではないかと思います。植物が光合成をするとその分太陽エネルギーを蓄積できるのですから、そうした使い方をする方が全体としてみても合理的でしょう。他にも用途はあるのす。わざわざ、そこに太陽電池を敷き詰める事は資金効率からもあまりよいとは思えません。
一刻も早く、効率的で正しい支援方式へとの政策変更が行われる様に私達も運動を進めていかねばならないでしょう。
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