2008年8月7日木曜日

環境で変わる・太陽電池の発電効率


静岡県浜松市在住のある方の月別発電量


http://www.nikkeibp.co.jp/style/eco/column/iwahori/080805_kouritsu01/
2008年8月5日
株式会社 発電マン 代表取締役・岩堀 良弘 氏
うだるような暑い日が続きますね。こう暑いと身も心もぐったりです。しかし、こんなに暑い中、ひたすら一生懸命働く働きものが屋根の上にいます。そう太陽電池です。えっ? 俺たちも働いてるって? そうそう屋根職人さんを忘れてはいけませんね。本当に殺人的な暑さの中、パネルを1枚1枚丁寧に敷き詰めていく作業は、大変なんてものではありません。真夏の屋根の上の暑さは想像を絶する程です。ここのところ35℃~36℃といった猛暑が続いていますが、そんな日は屋根の表面温度は75℃や80℃にもなります。足の裏が火傷するほどの熱さですから、素人が登ると本当に危険です。
・太陽電池もお暑いのはキライ?
でもお客様からはこんなふうに言われることがあります。「こんなに暑いのですから、太陽光発電の発電量もさぞかし凄いのでしょうね!」そんな質問に私はちょっと苦笑いしながら、「いえ…実は太陽電池は暑さに弱いのです」と答えます。するとお客様はビックリしたような顔をして、「太陽で電気を作るのに、熱に弱いんですか?」と聞いてきます。そう、何を隠そう太陽電池は“暑さに弱い”のです。「1年の内でどの季節に一番発電すると思いますか?」という質問をすると、大概の人は直感的に「夏が最も発電する」というイメージを持っているようですが、実はそうともかぎりません。次のグラフを見て下さい。これはわが社で設置したあるお客様(静岡県浜松市在住)の、1年間の発電量の推移を表したグラフです。このグラフを見ていただくと分かるように、発電量は実際のところ春が一番多いことが分かります。また、夏は日差しもが強く日照時間も長いのに、春に比べてそれほど多く発電していないことも見て取れます。これは、太陽電池の原料であるシリコンの特質が原因です。実は太陽電池は温度が高くなると発電効率が低下し、反対に温度が下がると効率が上昇するという性質を持っています。暑い日が続く真夏が年間発電量のピークにならないのは、そのためなのです。しかし、それよりこのグラフを見て皆さん驚かれるのは、そもそもこのように月ごとに発電力が大きく変化しているという事実ではないでしょうか。
・原料以外にも発電量が変動する原因が
ではもう一つの事例を見ていただきましょう。

静岡県焼津市在住のある方の、月別発電量
これは同じ静岡県ですが違う市(焼津市)に建つあるお宅の月別発電データの推移です。こちらの場合もやはり春は全体的に発電量が多いのが分かります。ただし、天候の影響でしょうか、3月と4月の発電量が逆転しています。また6月の発電量がかなりあるのに7月は逆に落ち込んでいます。こちらの場合は先ほどのケースと違い夏場の8月は春並みの発電量を達成していますね。最初の事例と比べて、大きな違いがあるのですが分かりますか?よく見ると、最初の事例では冬場の落ち込みがそれほどないのに対して、次の事例では春夏の発電量に対して、冬場の発電量が少なくなっています。この結果には、屋根の形状の違いが大きく影響しているのです。実は最初の事例は切妻型の屋根、後の事例は寄棟の屋根なのです(切妻と寄棟の形状の違いについては、下の図を参照下さい)。そしてこういった屋根の形状や、方角、傾きなどが発電量に影響を及ぼすので、月々の発電の仕方も違ってくるという訳なのです。

切妻屋根(左)と寄棟屋根(右)
また今回お見せした事例では、夏場よりも春のほうが共に発電量が多いのですが、地域や設置の条件次第では、夏場の発電のほうが多くなることもあります。さらに年によっても月々の発電量は変わります。このように太陽電池はなかなか一筋縄ではいかないしろものなのです。それがもっと具体的に分かる例として、太陽光発電システムを設置した場合に各家に設置される発電量モニターを見ていただくことにしましょう。
・太陽電池の発電量はどうやって決まるのか?
あなたは実際に太陽光発電が発電している状況を観察したことがあるでしょうか?初めて発電モニターを見た方は驚きます。なぜなら、モニター画面ではその時の発電量を表示しますが、雲一つ無い青空の日でも画面に表示される発電量は刻一刻めまぐるしく変化するからです。「太陽電池」というくらいですから、乾電池のように常に一定の電気が起こるように思っている人も多いのですが、実際の発電モニターを見ていると同じ数字が1秒と続きません。それくらい瞬間、瞬間で発電量は変化するのです。

わが家の発電量モニター
こんなに目まぐるしく発電量が変化していたら、この太陽電池はどれくらい発電するのかよく分かりませんよね。先ほどの事例は浜松市と焼津市というかなり離れた土地でのデータですので、発電データもかなり違うものになりましたが、時には同じ市内でも異なる発電量を示したりすることもあり得るのです。このように、太陽電池というものは、天候、素材、屋根の形状など様々なものに影響を受け、非常にあいまいなものでもあります。これでは、例えばAとBと2種類の太陽電池があるとして、どちらがより発電するか評価したい、といった場合に大変困りますよね。しかし、実際カタログにはこの太陽電池の定格発電量は○○Wです、というように表示してあります。では、それはいったいどうやって決めているのでしょうか? 本当にその発電量は正しいのでしょうか?後編では、太陽電池の発電量に影響する要因にはどういったものがあるか。またその発電量はどうやって決められるのか、といった点の種明かしをしていくことにしましょう。



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