2008年8月4日月曜日

「24時間365日稼働の太陽光発電」、米MITが独自の触媒で実現へ


左は日中の発電の仕組み、右は夜間の発電の仕組み。ポイントは、電気分解の効率が高いMIT独自の触媒である(画像のクリックで拡大します)。
出典:Patrick Gillooly, MIT


http://www.eetimes.jp/contents/200808/37485_1_20080801145109.cfm
(2008/08/01) 米Massachusetts Institute of Technology(MIT)の研究者は、太陽電池セルと独自の液体触媒技術とを組み合わせることで、昼も夜もなく24時間365日にわたって発電し続ける太陽光発電システムを実現する技術を開発したと発表した。日中は、太陽電池パネルで発電すると同時に、余剰なエネルギを使って水を水素と酸素に分解して貯蔵しておく。このとき電気分解に効率が高く低コストの独自の液体触媒を使う。太陽電池パネルで発電できない夜間には、日中に貯蔵しておいた水素と酸素を燃料電池で合成して発電する。このとき燃料電池が排出した水は、日中に再度電気分解して使うため、容器にためておく仕組みだ。こうして1日24時間にわたって発電が可能になるという。MITで化学の教授を務めるDaniel Nocera氏の研究チームが開発した独自の液体触媒を使う。同氏は、この触媒を利用した電気分解の効率はほぼ100%と主張する。「水を電気分解する際に難しいのは、水素の分離ではない。触媒として使われる白金は、水素に対しては十分に機能する。しかし白金は、酸素に対しては非常に反応が鈍く、分解に比較的大きなエネルギを使う必要があった。そこで、酸素に対しても余分なエネルギを必要とせずに機能する触媒を開発した。実際に、開発した触媒を利用すれば、電気分解時に流れる電流のほぼ100%が、酸素と水素の生成のために消費されるようになる」(同氏)。これまでも電気分解の効率を高める方法としては、酸化ニッケル触媒があった。ただし、酸化ニッケルには毒性があるため、水の貯蔵に気密封止した高価な容器が不可欠になってしまうと同氏は指摘する。これに対しMITが開発した触媒は「グリーンであり、安価な開放型の容器が使える」と同氏は述べる。「酸化ニッケルは、腐食作用があるため、一般的な環境では扱いにくい。空気中の二酸化炭素でさえも、酸化ニッケルと反応して炭酸塩を生成してしまう。一方、新たに開発した触媒は、一般的な環境の中でほかの物質と反応することがない上、資源として豊富に存在する材料を使っている」(同氏)。

コバルトとリン酸塩からなる新たな触媒をMITが開発した。出典:MIT News Office
 MITが特許を保有する、水溶性のコバルト・リン酸塩(cobalt phosphate)を触媒とする。電気分解時に電流が流れると、この触媒が自然に酸素電極に付着し、効率を高める役割を果たす。電流が遮断されると、コバルト・リン酸塩はまた水に溶ける。こうした単純な反応を繰り返すだけであり、一般的な電解槽で対応できるという。「開発した触媒はグリーンで、触媒自体を環境中の汚染物質から保護する必要もない。従って、電気分解を担う装置を、現在一般的なものに比べて大幅に安価に実現できるようになる」と同氏は述べる。現在MITは、太陽電池セルの製造企業と共同で、開発した触媒を使う電気分解装置を太陽エネルギ・システムに組み込む作業に取り組んでいる。先に述べたとおり、日中の余剰なエネルギを使って水素と酸素を生成して貯蔵しておき、夜間は必要に応じて、燃料電池で水素と酸素を利用して発電する。「太陽電池メーカーは、極めて安価な電解槽を追加することで、24時間365日ずっと稼働する太陽光発電システムを実現できるようになるだろう」と同氏は言う。この研究には、MITのポストドクターであるMatthew Kanan氏が参加した。研究資金は、MITのEnergy Initiativeと、Chesonis Family Foundation、Solar Revolution Project、National Science Foundationが提供している。
(R. Colin Johnson:EE Times)
参考リンク >> 米Massachusetts Institute of Technology(ニュース・サイト)


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