2008年8月28日木曜日

太陽光発電 補助金復活NO 固定価格買い取り制度に変更せよ(中川修治)


出典:http://www.news.janjan.jp/living/0808/0808265610/1.php
2008/08/28
 二酸化炭素(CO2)を排出しない身近なエネルギーの一つに太陽光発電がある。日本はかつて世界一の太陽光発電国だったが、3年前にドイツに抜かれてしまった。停滞気味の国内での普及に弾みをつけようと、政府が補助制度の復活を検討している。如何にも読売的な社説である。ここでいう使い勝手のいい補助金というのは設置時ばらまきだろうか……。使い勝手がいいとかではなく公平で公正で誰もが参加できるものでと言う事なら分かるが……。若干、認識に問題があるので、逐次、センテンスごと見ていきたい。

 太陽光発電 世界一の座をどう奪回する

 タイトルからして変だ。別に世界一にならなくても必要な量だけそれで出来れば良い訳で、すべてを太陽光でというものでもないのでその特性から現状ではピーク対応電源の位置づけをすればいい。

 生産量が増えても(一応、今でも1カ国では最大の生産量)それが国内に設置されないなら、生産時に出したCO2(太陽光発電の場合はこれが環境負荷の大部分)を回収することもできなくてCO2を出した成果のみが国内に残るので、エネルギー収支から見れば国内設置が最優先課題だろう。

 二酸化炭素(CO2)を排出しない身近なエネルギーの一つに太陽光発電がある。日本はかつて世界一の太陽光発電国だったが、3年前にドイツに抜かれてしまった。停滞気味の国内での普及に弾みをつけようと、政府が補助制度の復活を検討している。

 3年前に抜かれた理由は、十分に価格は下がったとして補助金を廃止した支援政策の無策にあることはちょっと詳しいものは誰もが知っている。

 福田首相は、地球温暖化対策として、太陽光発電を2030年に今の40倍にする方針を掲げた。

 これは、現在でも1.5Gw、150万Kwという最近、宮崎で稼働を始めた電気を貯めるだけの揚水式発電所と発電能力では同等で、環境特性からいえばはるかに優れた発電装置が作れる能力はある。この日本のメーカーの生産力からすれば2020年に達成可能だし、政策如何ではもっと早くもなる。

 この際、国民に使い勝手のいい補助制度を打ち出し、太陽光発電の普及を図るべきである。

 設置時補助金などという不公平で不公正で成果評価への実効性に乏しい制度をいつまでも続けているからこういう事になった。そもそもRPSなどという環境価値を買い叩く抑圧策をとるからこういう事になったのだということを指摘すべきだろう。実に乱暴な主張だ。実績のあるFITをわかりやすく紹介する記事を載せるぐらいの事があってもいいはずだ。折角、社説でも取り上げるぐらいに力を入れようと言うのならできないということはないだろう。

 発光部数では日本最大の影響力も取材力もある新聞なのだから……。太陽光発電装置の多くは、出力3Kw程度だ。一般家庭なら、年間電気使用量のほぼ半分を賄える。晴れた日中など発電量が多い時は、余った電気を電力会社に売ることも可能だ。

 大きなものは5Kwを超えるものもあるし、それは屋根面積と資金力によって決まったものだ。最近では、販売業者にとって都合の良いものということで2Kw程度のものにエコキュートとIHコンロのセットでオール電化で光熱費がお得という販売戦略に組み込まれたものが多い。「発電量が多いときは売ることも可能だ」ではなく、そうした仕組みに自動的になってる。むしろ売らないようにすることが機器の特性からして無理があるのが実態だ。

 それに、費用回収の面からみて、電力会社に余剰電力として売れるからやっと元が取れるように見えてるので、これを一切販売しない場合は、自家消費で全部使い切る以外に費用回収は無理だろう。

 日本では1990年代初頭から普及し始めたが、当時は装置が1000万円以上した。そこで、政府が94年度から1Kwあたり90万円の補助金をつけたことで、人気が一気に高まった。その後、装置の価格が5分の1程度まで値下がりし、補助金も引き下げられた。05年度は1Kwあたり2万円になり、それを最後に打ち切られた。これで急ブレーキがかかった。補助金打ち切りは時期尚早だったのではないか。

 94年にメーカーが補助金が出ると言うので製品として出してきたものは、1Kwあたり180~200万円、家庭用で3Kwシステムと言われたものが600万円だった。そして上限が1Kw90万円。でも個人負担は補助金なしでも現状60万円程度なのだから負担の公平性を考えるなら、すでに今は補助金を出す理由は一切ない。むしろ、ここで同じように出せば不公平を拡大するので、公金の使い方としては最悪だ。

 でも、産業政策としては止めるわけにいかない。で、1Kwが90万円を切った2000年ごろには廃止しても良かったものだ。ところが、政策市場であることが分かっていたので、設置業者や何よりもメーカーが補助金の存続を求めた。

 そして、この最後の年、平成5年の1Kwあたり2万円というのは3Kwシステムではたった6万円。これって、きちんと設置者が合い見積もりを取れば下がる価格で、実質的に何の役にも立たない申請書とかを書いたりとか、もちろん、受け取った国の方でも審査するための膨大な手間がかかることを考えればやらない方がましな補助金になっていたというのが事実だった。ただ、気持的にはあったほうが商売はしやすかったようだったので金魚のフンみたいに実はもらえる金額が少ないと積み残した予算消化で24億円がばらまかれて終わったのだった。

 一気にとはいえないものの、こうして何とか、年々、2倍ぐらいのペースというか補助金の枠で出来るマーケットで普及が進んできてはいた。

 で、設置者側には、意識としては、経済的には元を取るのは厳しいけど未来の世代のためとか、オール電化にしたら経済的でお得だという風な営業戦略に乗せられて、というのもあった。ところが、ドイツが実に適切な自然エネルギー支援策を導入した。それがFIT(フィードインタリフ)という仕組み。これは元々、ドイツのアーヘンという地方都市で実施された風力発電と太陽光発電に対しての発電原価を保証する買い取り制度(通称、アーヘンモデル)をお手本にしてすべての自然エネルギーに枠を広げて実施されたものだ。

 これが本格的に2002年ごろから導入されて一気に状況が変わりました。日本の優秀な太陽電池がドイツで使われるようになったのだ。一気に輸出が盛り上がった。

 すでに日本でもRPS法が導入される以前にこうした制度がいいのではないかとNPO・NGOからの強い要請があったものの、自然エネルギーが普及すると自分たちの利益が減るのだと考えた電力会社が強く抵抗、本来なら市場で取引して決めなければならない適正化電力価値を発電端での見せかけの価値として見せ、市場で取引されるべきではない環境価値を市場で取引して低負担で(つまり、自然エネルギー事業者には利益が出ない)導入をする(実質、導入を止める=リニューアブル・パワー・ストップ法)仕組みにしてしまっていら。

 これを反省し、今回、政府が打ち出すのが、補助金と税制上の優遇策の2本立ての支援策だ。補助金の額は未定だが、年間予算で総額100億円以上出していたこともある。少なくとも1Kwあたり10万円以上必要だ、とする声もある。確かに、あまり少額では効果も期待できまい。

 1Kwあたり10万円も出したら、たった2万円しか出してもらっていない人たちとの間に大きな不公平が生まれるし、それは初期の設置者のと間でも大きな格差が生まれてしまう。それと、設置時補助金に関しては、予算の範囲内でしかマーケットができないという問題が再度発生するだろう。

 これを反省するなら年度ごとの発電原価を計算してそれを現時点から期待耐用年である20年間を電力買い取り価格との差額補てんを行う事でそれぞれの設備投資者には一応は公平で公正な形の支援措置にもできるだろう。さらに、この制度へ転換することで発電量の全量が報告されるようになるのでCO2の削減量が明確にわかるようになる訳だ。

 合理的に考えれば、設置年度ごとの発電原価を出して、全量の買い取りに替えてその差額分を国が電源開発促進税というすでに電力料金にかけている税金をその費用に充てれば新たに国民負担を求める必要もないのだ。

 税制では、装置にかかった費用の一部を、所得税から差し引くことなどを検討している。所得のない人が自分の分の電気を作りたいと預金を取り崩したりお金を借りて発電所を作るとなると所得がないので こうした税金の控除は受けられないという事になるる、負担は不公平になる。一方、ドイツのように、電力会社に余った電気を売る場合の単価を、大幅に引き上げるべきだとの指摘もある。

 私はこちらをお勧めする。さらに、余った電気ではなく全量買い取りに変えるべきだと思う。そうでないと発電量の総量を計るメーターをもう1個、別に設置しなければならず無駄な費用がかかることになる。これは、グリーン電力証書取引がRPSとは別に普及策として有効だとしている場合も必要だとされているものだ。今ならちょっと配線を変えるだけで余分なメーターを1個減らすことができる。

 日本の売電単価は、電気使用料とほぼ同じ1Kw時あたり23円程度だが、ドイツでは04年から使用料の約3倍の90円程度に引き上げられた。これがドイツで太陽光発電が一気に普及した要因だ。日本よりも発電量が2割少なく、借入金利も高い国なので1Kwh90円としたのだろう。それにユーロ高の影響もある。日本なら1Kwhは45円が現在の発電原価。

  若しくは、ちょっと色を付けても現状なら50円で十分。KWhあたり90円も払ったらそれは払い過ぎ! で、もし売ろうとなればこの価格が支払われるべきなのは日本では2001年ごろ設置されたものとなるだろう。だが、この仕組みにも難点がある。電力会社にとっては、電気を高値で仕入れることになる。その分をドイツでは電気料金に反映させており、一般家庭で月500円程度の負担増になっている。

 高値で仕入れるというが、では今の電力が生産している電力の価格が妥当かどうかという問題も検討しておかねばならないし……。

 一般家庭は、自分で発電所を作れば決して損にならない。そもそも日本ではここで言われるように500円となる事はない。多分、200円以下だろう。となると一般家庭が、現状で原発のために支払っている年間1600円程度の電源開発促進税とそう変わらない支払いで済む。本当はこれを振り向ければ問題はないことになる訳だ。

 最近、電力会社がやると言うメガソーラーは家庭用よりもずっと設備費が高く。ここで高額の負担の心配をするなら電力会社が取り組まないでたくさん電気を使うところに積極的に取り組む責任があると言うべきだろうし、家庭用などのコスト面でも競争力のあるところに入れていって、パネルの価格などが安くなってから大規模なものを展開することを勧めるべきだろう。

 太陽光発電に関係ない家庭にとって、少ない額ではあるまい。こうした負担を受け入れるべきか。日本で売電単価を見直す場合、国民的な議論が必要になろう。原子力に金を掛けるか、自然エネルギーに金を掛けるか……。確かに国民的な議論が必要だ。

 原子力に関係ない訳ではないということなら太陽光発電にも関係ない訳ではない。個人の屋根にあってもそれは小さくてもちゃんとすべての電力を使う人の電力を生産しているのだという認識がなされるべきだろう。


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