http://www.semicon-news.co.jp/news/htm/sn1801-j.htm
太陽光発電を取り巻く環境が激変している。単結晶シリコン太陽電池の開発から半世紀を経て、ようやく本格的な普及が始まったと思いきや、そのスピードは加速するばかりだ。こうした状況に当惑しているのが、実は当の太陽電池メーカーかもしれない。旺盛な需要に対応しつつ、ライバルとのコスト競争に打ち勝つには、とにかく大量に生産するしかない。しかし、それには巨額の投資が伴う。この先、マーケットはどこまで拡大するのか。期待と不安を胸に太陽電池メーカーの挑戦が続く。世界規模で太陽電池の生産量が急増している。2007年における太陽電池セル世界生産量は3.7GW(PVニュース調べ)。前年(06年)の生産量が2.5GWだったので、この1年で50%近い成長を遂げたことになる。もっとも、市場の急拡大は必ずしも太陽電池メーカーにとってメリットだけではない。最大の懸案は原料シリコンの需給逼迫である。太陽電池の生産は長年、シャープを筆頭に日本メーカーがリードしてきた。ところが21世紀に入って登場したQセルズ(ドイツ)やサンテック(中国)といった海外ベンチャーがこれを猛追。07年にはついにQセルズがシャープを抜いて太陽電池生産量世界トップの座についた。 近年、太陽電池ビジネスで勝敗を分けるのが長期契約に基づく原料シリコン
の確保と言われている。原料が確保できなければ生産量を伸ばすこともできない。シャープの例を見るまでもなく、この点に関しては日本勢は対応が後手に回った感がある。もっとも、日本の太陽電池メーカーもただ傍観しているだけではない。これまでの遅れを取り戻すべく、反転攻勢に転じる動きが活発化している。太陽電池生産トップの座を明け渡したシャープは、原料シリコンの呪縛から逃れるため、薄膜シリコン太陽電池の大工場を世界展開する計画を明らかにしている。相対的に順位を下げている京セラ、三洋電機、三菱電機も2010年ごろをめどに現在の2~3倍に生産能力を拡大する計画を打ち出している。CIGSという化合物薄膜太陽電池で新たにソーラービジネスに参入した昭和シェル石油も1000億円を投じて、2011年までに現在の20MWから1GWに生産を拡大する大増産計画を発表した。「太陽光発電の普及が本物になった」との認識から、近年では様々な業種からの参入組が増えている。米国アプライドマテリアルズや日本のアルバックのような薄膜製造装置メーカーはもちろんのこと、インテル、IBMといった半導体メーカーもこの分野に進出を表明するなど、多くの技術と資金が太陽光発電に流れ込み始めている。米調査会社のアイサプライによると、太陽電池向けの投資は2012年までに半導体と肩を並べるまで増加すると予測している。成長著しい太陽光発電分野だが、浮かれてばかりもいられない。生産が拡大し参入企業が増えれば、当然その先に待ち構えているのは熾烈な価格競争である。市場の要求に応えられるコストダウンを達成できる企業のみがソーラービジネスの美酒を味わうことが許されるというわけだ。太陽電池の開発の歴史は古いが、ビジネスとして立ち上がってきたのはごく
最近である。言ってみれば、ここまでは単なる序章、ウォーミングアップに過ぎない。化石燃料に替わる電力の重要な担い手となる太陽光発電の本当の意味での競争は始まったばかりだ。
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