図1 太陽電池に用いられるp型BN/n型Siヘテロダイオードの概念図
出典:http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/press247.html
- 世界初・耐久性に優れ宇宙でも活躍・将来は透明太陽電池も -
平成20年9月4日 独立行政法人物質・材料研究機構
概要 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)半導体材料センターの小松正二郎グループリーダーらは、可視光に対して透明で、もっとも丈夫な材料(高温耐火物)のひとつである高密度窒化ホウ素(sp3-結合性BN)による太陽電池の試作に世界で初めて成功した。地球温暖化、燃料資源の枯渇・高騰に対処するため、様々な省エネルギー技術・新エネルギー開発が活発化している。なかでも太陽電池はシリコン太陽電池の実用化により普及が世界的に進んでいる。しかし、シリコンにはない機能や特徴を持つ太陽電池材料の発見、開発の余地もまだ大きく残されており、開発競争は激しい。今回発表するBN/Si系太陽電池は今まで報告例がなく、物質・材料研究機構が世界に先駆けて着手し、作製に成功した。BNは、紫外レーザや透明トランジスタなどを可能にするワイドバンドギャップ1)半導体2)として、期待されている材料だが、従来は半導体化に必要なドーピング3)が困難であった。今回、高密度BN薄膜のドーピングにレーザミキシング・プラズマCVD法という独自の手法を用いた結果、世界で初めてBN/Siヘテロダイオード4)の作製に成功した。これを用いて太陽電池を試作したところ、2%程度の発電効率を示した。これは現在の最も進んだシリコン太陽電池の水準(18%)と比較すると大きな開きがあるが、世界で初めて試作されたBN/Siヘテロダイオード太陽電池の出だしのデータとしては前途有望な値と考えられる。 今回採用されたレーザミキシング・プラズマCVD法は、ダイヤモンドと同等な原子間結合様式をもつ高密度BN(sp3-結合性BN)が合成されると同時にシリコ
ンのドーピングが進行するプロセスであり、これにより世界で初めてBN/Siヘテロダイオードが実現できた。また、レーザミキシング・プラズマCVDは、ワンステップで太陽電池セルが作製できることも特徴であり、この製造法では、電池薄膜の表面がミクロンサイズのコーンに覆われるため、太陽光の反射が抑えられ、光吸収効率の向上に役立つ。 BN/Si太陽電池は、特に耐久性、信頼性、耐候性などの要求がシビアな無人観測装置や、宇宙環境などの用途に特化したものが製品化される。今後、今回作製に成功したp型BNに加えて、n型BNを作製し、全体がBN製のホモダイオードを作製する予定で、この場合、可視光に対して透明な電池が出来る。これにより、蓄電池との組み合わせによる車載型サンルーフ発電システム、サングラスや窓に貼り付けられる太陽電池などの開発が期待される。 本研究成果は9月5日開催の応用物理学会(中部大学)にて発表される予定である。
詳細はPDF版(323 KB)でご覧ください。
0 件のコメント:
コメントを投稿