2008年9月26日金曜日

NEC:自然エネルギーとリチウムイオン電池を組み合わせる



自然エネルギーを活用した発電システムを企業に導入する場合の、システム概念図。発電出力のばらつきを抑え、電力を平準化するためには、大容量のバッテリーを使ったパワフルな電源システムが必要になります。オフィス内部で消費する電力を、通常時はおもに電力線でまかない、電力使用のピーク時に2時間程度、この大容量バッテリーから供給されるエネルギーを利用します。


出典:http://www.nec.co.jp/environment/features/05/index.html
太陽光発電の普及を妨げている「問題」とは・・・?CO2を排出しないサスティナブルな発電方法として注目が集まる、太陽光発電と風力発電。中でも太陽光発電は、今後最も早く普及が進むと期待されています。ドイツ・日本・米国をはじめ、世界全体の累積設備容量は近年、急速な伸びを見せています。
2008年6月に福田康夫首相が発表した「低炭素社会・日本をめざして(福田ビジョン)」でも、太陽光発電の導入量を2020年に現状の10倍、2030年には40倍(※)に増やすという目標が盛り込まれました。今後は電力会社の配電系統を利用しつつ、CO2排出を減らすために自然エネルギーを部分的に利用していくというのが、現実的な温暖化対策の柱になっていきます。個人住宅への太陽電池パネルの設置はもちろん、オフィスビルや工場においても、商用電源と常時接続して使用する系統連系型の太陽光発電システムを計画・検討する企業が相次いでいます。ところが今、ある「問題」が、普及の足枷となっているのです。

(※1)・・・原油換算で、1,300万キロリットル。今後、新築される個人住宅の約8割が、太陽光発電システムを設置するという状態に相当します。

発電出力のばらつきを、いかにして平準化するかその問題とは、天候や時間帯によって発電出力に大きな差が出るため、安定した出力が得られないことです。太陽光のエネルギーを電気に変換するため、当然、昼間の晴天時には余剰電力が発生しやすく、逆に曇りや雨の日は出力が大幅に低下します。またこの問題は、風力発電システムにもそのまま当てはまり、風の状態によって出力のばらつきが激しいため、とくに出力10キロワット程度の小型の発電システムは、これまではなかなか実用化に至りませんでした。
天候の良し悪し。昼間と夜間。風の強弱--。この不安定な発電出力の問題を解決するには、発電量が大きい時の余剰電力をいったん蓄えておき、電力が不足するときに自在に利用できる、比較的低コストで高性能なバッテリーが必要になるのです。

電気自動車向けバッテリー開発で培った、驚異の長寿命NECグループの電子部品メーカーで、エネルギーデバイスの分野で独自技術を数多く有するNECトーキン株式会社は2007年、自然エネルギー用途に向くバッテリー「大容量ラミネート電池」の開発に成功。現在、実用化に向けた実証実験に取り組んでいます。
大容量ラミネート電池とは、正極材に「マンガンスピネル」という、低環境負荷で熱暴走を起こしにくい独自の結晶格子構造を採用しており、しかも電池セルにラミネート構造を採用することで安全性を高めたリチウムイオン電池です。
もともとNECトーキンは、大容量のリチウムイオン電池をさまざまな市場に提供してきた実績があり、高出力型バッテリーに関する豊富な知見を有していました。その一例が電動アシスト自転車です。今でこそ、ユーザーの環境意識から、急速に拡大している電動アシスト自転車市場ですが、NECトーキンは、6年以上も前からこの市場に供給しており、その供給性や安全性技術に電動アシスト自転車メーカ様からも大きな信頼を得ています。このほか車椅子や各種ロボット、モバイル端末、電動工具など、幅広い機器に採用され、その安全性や出力性能が高く評価されています。最近では日産自動車と合弁事業を設立し、電気自動車向けのマンガン系ラミネート電池を開発。加速の際の大電流出力や急速充電に対応できるように、電極仕様の見直し、集電構造の最適化などを行っており、2010年度に投入される日産自動車の電気自動車、およびハイブリッド車に採用される予定です。
自然エネルギー発電システムの電力を平準化する「大容量ラミネート電池」も、こうした技術的な蓄積を基に開発したもので、その最大の特長は、約3,000~4,000回というサイクル特性。環境にやさしい、かつてない長寿命バッテリーなのです。「つまり365日、毎日1回フルに充電と放電を繰り返しても、10年間も使えるわけです。これほど優れたサイクル寿命を持つ電池を完成させることができたのは、やはり電気自動車向けバッテリーの開発で確立した技術があったからこそです。そもそも電気自動車の普及が進まなかった理由の一つは、電池のサイクル寿命が短かったから。わずか100回程度の充放電でバッテリーの寿命が尽きてしまうので、大量の電池を積みかえる必要があったのです」。こう語るのは、同社 マーケティング本部 ソリューション技術部 部長 堀仁孝氏。大容量ラミネート電池はこのほか、最大18Aの連続放電電流という出力性能を損なうことなく小型軽量化を実現し、設計の自由度が向上したこと、環境規制物質を禁止したRoHS指令に準拠していること、豊富な埋蔵量のマンガンを電池の主原料にしていることなどが、環境面から見た大きな特長となっています。


大容量マンガン系ラミネート電池。蓄電池は、太陽光発電システムと風力発電システムの普及に欠かせない重要なエネルギーデバイスです。NECトーキン製品は、約3,000~4,000回もの驚異的なサイクル特性、高い放電特性と温度の安定性(安全性)、小型軽量化の実現など、市場ニーズに合致した多くの特長を有しています。写真は一般ユーザ向け標準品、第一弾製品の「24V標準電池パック」。左が7直列1並列製品。右が7直列2並列製品。今後も、皆様のご期待に応える製品シリーズを続々と展開する予定です。

社会全体で電力を融通し合えるしくみづくりにチャレンジ企業や家庭へ、今後、大量に導入される自然エネルギー発電システムからの電力供給を安定化・平準化する高度な技術を持ち、しかも突出したサイクル特性を実現しているバッテリーを、現時点で供給できる数少ない企業の一つが、NECトーキンなのです。大容量ラミネート電池については、自動車業界や発電機メーカーだけでなく、住宅メーカーや各種産業機器メーカーなどからも引き合いが来ており、すでに試験運用を開始している案件もいくつかあります。
そして今後、同社は独自のバッテリー技術とNECのITを融合して、社会のさまざまな場所で浪費されている電力のムダを「見える化」し、企業/自治体向けの環境ソリューション・省電力サービスを展開していく構想を持っています。「日本の産業界は、すでにもう搾りつくせないほど徹底した省エネ・省電力が実施されていると言われますが、本当にそうでしょうか? 実は、まだまだ搾る余地はあるのですよ。そのためには、リアルタイムで使用機器ごとの浪費電力を測定して、適切な方法でムダを抑制していかなければなりません。また、電力消費のピーク時には、社会全体で電力を融通し合うという考え方が今後は不可欠になりますが、こうしたしくみをつくるには、私たちが持つエネルギーデバイスの技術に加えて、NECのITと情報システム構築のノウハウが必要。これらを融合して、温暖化ガス排出量の削減に貢献できる新しいチャレンジを始めたいと考えています」(堀氏)。


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