2008年9月4日木曜日

太陽電池の“スーパーカー”対決


出典:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20080829/157144/
2008/09/01 10:10
河合 基伸=日経マイクロデバイス
 「太陽電池に詳しいユーザーには,三洋電機製が一番人気ですね。変換効率がダントツに高いことから,太陽電池の“スーパーカー”的な存在です」――。

 今年の夏は,太陽電池に関するイベントが相次いで開催されました(Tech-On!の太陽電池サイト)。冒頭のコメントは,ある懇親会で,太陽電池モジュールの再利用事業を手掛ける企業の方から聞いたものです。

 三洋電機は,モジュール変換効率が高く,高温時の出力低下が少ない独自の「HIT(Heterojunction with Intrinsic Thin layer)太陽電池」を持っています。国内では,変換効率の高さで向かうところ敵なしです。この点が,太陽電池に詳しいユーザーを引きつけているようです。

 しかし,この状況が変わるかもしれません。米国から,別の“スーパーカー”が上陸する可能性があるのです。それは,東芝が「太陽電池事業の可能性を検討している。現在,各メーカーの太陽電池モジュールを検証中」と表明したことと関係があります。この東芝のモジュール調達先として名前が挙がっているのが,米SunPower Corp.です。

 SunPowerは,電極を背面のみに配置するバック・コンタクト構造を採るのが特徴です。光を遮る電極が表面にないために,変換効率が高いほか,セル全面が黒く見えて意匠性に優れます。

 三洋電機とSunPowerは,これまでも実用レベルの結晶Si型太陽電池で,変換効率の最高値を競ってきました。2007年9月の学会「EU PVSEC」では,三洋電機が公的機関の測定で22.3%を,SunPowerは自社測定ながら22.4%を実現しています(関連記事12)。0.1ポイントの差を付けられた三洋電機は「公的機関の測定と社内測定を同列に扱うことはできない」と反論していました。

 いずれにせよ,SunPowerが上陸すれば,高い変換効率に魅力を感じるユーザーの選択肢が増えることになります。果たして,再利用モジュールの人気番付に変化はあるでしょうか。また,9月1日から始まった今年のEU PVSECでは,どちらが高い変換効率を示すのでしょうか。変換効率向上のために,どのような技術が導入されているのか楽しみです。日経マイクロデバイスでは,引き続き取材を続けます。

 ちなみに,冒頭のモジュール再利用事業を手掛ける企業の方は,「われわれの事業を太陽電池メーカーがどう思っているのか怖くて聞けない」と心配していました。
 知り合いの太陽電池メーカーの方に聞いてみると,「太陽電池を廃棄することなく再利用してもらって感謝している。すばらしい事業だ。ぜひ情報交換したい」との答えが返ってきました。一度,連絡してみたらいかがでしょうか。その結果として,太陽電池メーカーを巻き込んで,太陽電池モジュールの再利用がさらに進むことを期待しています。



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