2008年9月4日木曜日

山谷剛史の ニーハオ!中国デジモノ・案外エコかも……中国発「ソーラー充電器」のトホホぶり



出典:http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20080828/1018064/
2008年09月03日
Prev Next  2008年というと、北京五輪の年であり、やたら中国が話題になった年だと思うかもしれないが、日本が主催の「洞爺湖サミット(第34回主要国首脳会議)」の年であることも忘れちゃならない。洞爺湖サミットは別名“環境サミット”とも呼ばれ、会議前にはエコを推進する記事やテレビ番組がやたらと目立った。
中国で“エコ”は無縁じゃないんです
 さて、中国というと世界の工場で、環境をあまり考えないというイメージだろう。しかし、中国は工場地帯や港湾ばかりに注目せず庶民の生活に目を向ければ、意外なことに、日本以上にエコに取り組んでいるといえる部分もある。例えばレジ袋。6月はじめに、中国全土でレジ袋が有料となった。いい意味でも悪い意味でもケチで商売上手な中国の消費者は、それまでにもらった他店のレジ袋をマイバックにしてレジ袋をもらわないように(余計なお金を払わないように)努力している。

スーパーではレジ袋が有料化。相手が旅行者の外人だろうが容赦ないぞ

中国でもマイバックを推奨している
 例えば太陽光湯沸かし器。多くの近代的な住宅には、集合住宅、戸建住宅を問わず太陽光湯沸かし器が備わっている。電気温水器やガス湯沸かし器はオプションで、建物に最初から備わっていないので、経済的に中から下の家庭が、太陽光湯沸かし器から、シャワーの湯などを供給している。曇りや雨の日が続けばお湯が出ないわけで、家でシャワーは浴びられなくなるのだ。

中国の街をちょっと高いところから眺めると、屋上には太陽光湯沸し器がたくさん置かれているのが見て取れる
太陽電池製品が登場。でも高いぞ!
 そんな中国で、ポータブルな太陽電池が発売された。当連載でも何回か紹介している、中国ナンバー1周辺機器メーカーの「愛国者(aigo)」が作った「動力艙」という製品がそれ。単に太陽光パネルを本体につけて充電するだけではなく、説明を見る限り面白いギミックとなっている。

下位モデルの動力艙I2900。両面に異なるパネルを備え、片面は白昼の太陽光用、もう片面は室内灯用となっていて、光の状況で使い分けチャージする

上位モデルの動力艙I2911。バタフライモデルというのだろうか、3面に開き、大きな面積で電力をチャージする
中国メーカーというと、こなれた製品を安価に販売というイメージがあるが、これはほかにあまり類を見ないギミック搭載で面白い。しかし問題はその値段。下位モデルの動力艙I2900で499元(約8000円)、上位モデルの動力艙I2911で799元(約1万3000円)と、若いサラリーマン層の月収の3分の1から半分に達する。IT製品に貪欲な若者には高すぎる価格だ。
愛国者の太陽電池を買いに行った
 中国人には手が届きにくい価格の太陽電池製品。しかしそのギミックの面白さと実用性から、筆者は上位モデルを購入することに。行った先は上海の電脳街「徐家匯(シージャーフイ)」。先に筆者の滞在する某地方都市の電脳街でこの製品を探したのだが、非主流商品で価格が高いことからか、愛国者製品代理店では置いていなかった。で、上海というわけ。
 徐家匯の電脳街には、電脳ビルが何棟もあって、各ビルには愛国者製品代理店があるのだが、それぞれの店舗で愛国者製品をくまなく扱っているというわけではなく、やはり売れそうな製品しか置いていないわけで、太陽電池「動力艙」を置いている店もごく少数だった。愛国者に限らず、どのメーカーの代理店も非主流のマイナーな製品はあまり置いていない。代理店だからって販売中の商品は何でも在庫がある、あるいは取り寄せられる、と思ったら間違いで、なければ「没有(メイヨー)」と店員に言われて終了なのだ。で、購入した動力艙I2911。高い製品を買ってくれたものだから店員は大喜び。「日本で売ってなく、魅力的なので買いました!」そう言うと店員はさらに歓喜。喜んだ店員は、あれやこれや世間話をふってきたのだった。早速、これを自宅に持ち帰り、見てみることに。
意外!? 今回は“あまり”トホホじゃないかもよ
 それでは、愛国者の動力艙I2911を紹介しよう。

パッケージ。以前紹介したMP6プレーヤーも、レノボケータイS9もそうだが、パッケージの質感は悪くない

梱包物一覧。専用ポーチも付属するので持ち歩ける

本体の大きさはこれくらい

本体背面。電源端子とUSB端子のいずれかで製品に給電ができる。また本体付属のACアダプターで本体に給電しチャージもできる

専用のケーブルを介すことで、10種類の電源コネクターに対応
写真でみるように、元々が「太陽光で電力をためて、電源として使う」というシンプルなものなので、基本的な性能については難癖を付ける要素のない製品だ。でも、結構使いこなすまでに時間がかかり不満があった。まず一つに、10種類の電源コネクターに対応しているが全然足りない。家にある多くの電気製品にはつながらなかった。つながればラッキーと思うべきだろう。そして出力電源が8.4V 1000mAであること。この電力限定で、かつコネクターが同じ組み合わせの電気製品なんてそうそうないぞ。出力電力が調整できれば最高だったのに。次に付属のポーチが手抜き。実にひねりのないシンプルなポーチなのだが、小さなコネクター類がたくさん付属しているのだから、そのコネクターを入れるためのポケットくらい付けるべきだろう。

太陽光パネル側のボタンを押すと、チャージした電力残量が4段階で青色で表示される

太陽光を当てると、チャージ中であることが赤色で表示される

MP6プレーヤーにつないでバッテリーをチャージ。中国製品同士の夢の競演

レノボケータイS9につないでこちらもチャージ。これまた中国製品同士の競演で、中国人歓喜?
なんと、電力がゼロになると太陽光で充電できないなんて……
 マニュアルだって超手抜きだ。肝心な情報がほとんど書いておらず、会社の宣伝的内容がやたら目立つ。せめて太陽光に何時間さらせばチャージ完了くらい書いてほしかった。 一番致命的だったのは、この製品の電力がゼロになると、いくら太陽光にさらそうがチャージされないこと。ACアダプターを接続して、少しチャージされたことを青色灯で確認したうえで、太陽光にさらさないとチャージされないのだ。この問題は前出の通り、マニュアルには書いていない。 これらの問題を認識したうえで、例えばUSB給電に絞って利用しようと割り切れば、寛容な人にはアリな製品と言えるだろう。携帯電話の充電をまず思い浮かべるが、それ以外でも、たとえばニッケル・水素蓄電池のUSB専用充電器セットをこれと組み合わせれば、太陽光で充電する電池「バイオレッタソーラーギア」と同じことができるし、結構ありじゃないかと。eneloopには専用の太陽光充電器「N-SC1S」が発売されているが、それより汎用的に使える(保証はないが)。またUSBハンディクリーナーやUSB扇風機やUSBライトの電源としても使える。考えれば考えるだけ用途は広がりそうだ。

太陽光充電がウリの「バイオレッタソーラーギア」
USB端子から充電するeneloop用充電器も使えるかも

 余談だが、この製品を購入時に「どんな電気製品でも使えるよ!」と店員がいうので、「(特殊なコネクター形状の)Nintendo DSでも使える?」と聞いたら「もちろん使えるよ!」と自信アリな態度で答えてくれた。中国でデジモノを買うときは、店の人のセールストークを鵜呑みにせず、自分で最初にカタログとにらめっこしよう。熱血バイヤー!細川茂樹さんもそう言ってますよ。
著者
山谷剛史(やまや たけし)
 海外専門ITライターとしてライター業を始めるものの、中国ITを知れば知るほど広くそして深いネタが数限りなく埋蔵されていることに気づき、すっかり中国専門ITライターに。連載に「山谷剛史のアジアン・アイティー」、「山谷剛史のチャイナネット事件簿」、「華流ITマーケットウォッチ」など。

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