筆者の家の出力4.98kWの稼働14年目の太陽光発電と、11年目に壊れたので新たに交換設置した真空ガラス管式太陽熱温水器
出典:http://www.news.janjan.jp/living/0809/0809046318/1.php
2008/09/05
太陽光発電など、自然エネルギーからは新たな未来が見えてきている。しかし、注目の太陽光発電、大規模なものほど実は非効率。家庭用を中心に、世界的に有効性が確認されているFIT(フィード・イン・タリフ)固定価格買い取り制度で、発電の全量を社会的に評価する仕組みに変えるべきでは……。家庭用太陽光発電の補助金は一般家庭向きは十分価格が下がったとして2005年で廃止されたが、10万kW以上の産業用はまだまだ価格が十分に下がっていないと言うこと(不思議だ、大規模なものの方が高い……)と、まだ、新規の技術的な開発を進める為には支援措置が必要だと言う事で、大盤振る舞いの半額補助がなされている。その、平成20年度太陽光発電新技術等フィールドテスト事業(第二次)の公募説明会が先月、東京、大阪、福岡の3箇所で開かれた。補助金制度を見てみようと大阪での説明会に参加した。関係者から聞いたがここでの参加者は殆どが設置事業者だった。不思議な事に事業では共同研究者となるべき設置する本人が来なくて、その事業者に頼まれて機器を納入する人たちが説明会にきているのだ。これは機器の販売業者が仕事がほしくてやってきていて、補助金が出るからと設置してくれそうな所へ営業をかけるということなのだろう。さて、予算であるが二次の分が10億円と言う事だ。前期と合わせて総額で58億円とか……。まあ、多いか少ないかはその成果によるだろう。
・新エネルギー技術フィールドテスト事業への疑問
さて、説明を聞いていて、この支援制度自体への根本的な疑問を感じた。このFT(フィールドテスト)事業の共同研究の期間がたったの5年なのである。で、5年たったら共同研究をした相手に国民の税金で作った設備を強制的に10分の1に減価償却して譲ってしまうと言う風に以前聞いたことがあったが、よくよく考えてみればこれもなんだかおかしい。まずその期間について。太陽光発電の設備は最低でも20年は持ってもらいたいものだが、テストの期間のたったの4分の1の5年で短すぎるということだ。で、モノが壊れるのは時間が経ってからだ。ちなみに、私の自宅の太陽光発電システムは太陽電池は壊れていないが、その直流の電気を交流に変換して電力系統に繋ぐパワーコンディショナーと言う装置が13年目にして壊れてその改修費用に40万円近くも掛かったのだ。この費用を電気を売ったお金で回収するには現状では2年半も掛かってしまう。さて、初期の5年で問題が無ければあとの15年は壊れもしないで動くとでも言うのだろうか? それは、無理。絶対にないと言える。大体、機械物は、初期不良が出なかったらあとはかなり調子よく動くが、それでも年数を経れば壊れるものだ。むしろ、こういう長期的なテストを必要とする事業は厳選して、成果をきちんと評価するぐらいで無いと役に立たないのではないかと思える。で、今年からFT事業はインターネットを使ってデータが集計されるようになったと言うが、そのデータをどう使うのかについてはまだ検討していない、と言う。そもそも、では一体、今までのデータはどう利用されていたのかということだ。
関連サイト:新エネルギー技術フィールドテスト事業(NEDO:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)
この事業、総括する事が絶対に必要だろう。それも専門家やNPO・NGOが加わっての検討会議を行うべきだろう。そうでないと公金の無駄遣いにしか見えないと思うのだ。これは私だけの意見ではない。説明会を聞いていた業者の方が言うには「こんな、補助金の出し方ってオカシイですよ。新規性のある事業とか言うけど、そもそもこんなもん、合い見積もりを取れといっても、やったことが無くて新規性のあるものをやるというもの自体が、合い見積もりを取れるはずも無いもんやと思いますわ」。「考えて見れば全くそりゃそのとおり当然だよな」と思う。で、「どういう風なの」と聞くと「そもそも設置業者にこんなFT事業を申し込ませると言うのがおかしい。パネルが新しいタイプと言うのなら、それは製造メーカーが申請主体になって、研究場所提供者と共同で事業申請をするべきだ」と言われる。これも至極真っ当な意見、納得できる。どうも、このFT事業は、本来、FT(フィールド・テスト)が必要とする成果評価が、なんらなされていない事業であるとしか言いようが無い、というのが結論である。
NEDO事業で設置された太陽光発電システム。1kWあたりの設備単価は平均で80万円を超える。高いものは100万円以上だけど半額補助を受ける。補助金なしの家庭用なら65万円程度。でもまだ高いと、誰もが価格の低下を待っている
・「大きいことはいいことだ」だったのは昔
まあ、こういう風にしてでもメーカーに市場を作ってやって金を流し込む様にして支援して見せてますよ、という風にして効果のある時代もあったのでしょう。でも、それって実は家庭用太陽光発電の補助事業が始まった頃の話で、今やそんな事業は意味を持たなくなってる、とすら言える状況だ。まず、その使われる太陽電池の量が市場にとって意味のあるほどではない、ということ。80万kWを超えるほどの量が生産されるのに、このFT事業の規模は全部合わせてもせいぜい2万kW程度の規模であること。さらにその製品スペックが特殊であるということ。また、こうした単年度事業は 募集時期が限定され、通年で仕事がないので、仕事に波があることなどの問題がある。ということから見れば既に、こうした中途半端な事業の役割は終えているとみるべきだろう。すでに、こうした太陽光発電の事業においては、量産効果によってどれだけコスト削減が図れるのかという点にあるのだから、成果もフィードバックできないようなFT事業は止めて、本当に意味のある事業だけに限定した方が余程効果が上がるだろう。少なくとも之まで行われた事業は全部、その装置がどう使われているのか、どういう経済効果を上げているのかを含めて、本当の意味の成果評価を行うべきだろう。次に、このFT事業の経済性を見てみる。このFT事業は10kW以上の規模のものが対象になっている。その理由の一つが、産業用の大規模なものの価格が十分に下がっていないから補助金で、支援する必要があると言うものだ。しかし、考えてみればおかしな話だ。太陽光発電自体は1kWのものは、産業用だろうが家庭用だろうが、同じだけの電力を生産する。ならば、同じ支援を行うなら1kWあたり20万円近く安い、一般住宅用の支援に資金を使えばさらに量産効果を生むことは確かだ。「大規模なもの」への支援は、公金の無駄遣いにも見える。「電力会社がやるべきプロジェクトではないのでは?」で私は、九州電力が大牟田に建設するとしたメガソーラーの資金の非効率を指摘したが、最近、マスコミをにぎわしているメガソーラーなどよりも、家庭用太陽光発電の方がよほど分散型で系統への負荷平準化にも貢献し、資金効率が高いことはちょっとその数字を比較すれば分かることだ。補助金を国から受けようが受けまいが、その費用が20万円安い方がいいに決まっているだろう。
・普及には固定価格買い取り制度(FIT)が有効
一般家庭用の太陽光発電は、補助金がなくなったということもあって、国内設置は2年続けて減ってしまった。そして、固定価格買い取り制度(FIT)という、設置者が確実に設備投資費用を回収できる成果支援制度で普及を図っている、ドイツをはじめとする欧州などへと、日本の太陽電池が昨年は80%が輸出されている。さらに、今年は3~5年後には半額にすると言った「福田ビジョン」の所為で買い控えが起こり、国内需要は急激に落ち込んでしまった。(関連記事:地方では太陽光発電の設置業者が倒産している)ここで、政策的な新たに支援を行うと言うのなら、これまでの制度の問題点を解決しさらに発展的に展開できる日本型の固定価格支援制度へと変更するべきだろう。以下にその実施例を考えてみた。
●太陽光発電に関しては、余剰電力の買い取りではなく全量買い取り義務へと変更する
●電力の買い取り価格は当面、1kWh25円とする
●個別の太陽光発電事業者からの買い取り価格は、設置年度毎の発電原価から25円を差し引いたものを電源開発促進税から支給する
●支給するにあたって各地域の経済団体発行の通用期間限定の買い物クーポン券で支給されるものとする
今後、普及量が増えれば、当然、発電原価は下がっていくので、当然、その買い取り保証価格はどんどんと下がっていくことになる。これによって日本の社会の中に、再生可能エネルギー(自然エネルギー)の装置へとお金が回っていく、よい経済循環が出来上がることだろう。これは、疲弊していく一方の地域経済にとっても、地域内の経済自給力を高めることになるだろう。20年間で経済的に元が取れるなら、30年持たせればあとの10年は無料で電力が手に入る訳だ。借金してでもやれる話だ。これは、太陽光発電が生産財で、新たに今まで人間にとって価値のなかった太陽の光を私たちの社会に導きいれると言うことで、人間の社会を豊かにしているから成り立つわけだ。
・ばら撒きの為の事業は経済合理性を欠く
さて、問題のNEDO事業だが、ばら撒きの為の事業は経済合理性を欠くのでやめるが先進的な取り組みはなされねばならないので、以下に事業の本当の代替提案を考えてみたい。
●プロジェクトの必要性のある提案のみの採択を行う
●実施主体を別に募集する
でも、これでも難しいだろう。企業にとってはノウハウとか新アイデアとかは宝だからだ。ここへ出す事自体が、そのノウハウが出て行く恐れがある。だから、ここで提案されて採用されるアイデアに関しては、特許権の半分とか実用新案権の半分が政府収入になる様にしてあげると言うのも手だ。ただし、官僚の利権と化する懼れはある。NEDOみたいな経産省からのばら撒き補助金の窓口から、本当に必要なプロジェクトに関しては別のところへ変えたほうが良いのかもしれない。技術的な検討を企業などと一緒にできると言うことなら、産業総合研究所の太陽光発電センターが妥当だろう。ここなら専門の研究者を抱えているので、過去のデータを含めて、キチンとした成果を評価できると思う。まあ、何にしろ、これまでやってたからとその事業の妥当性も考えずにだらだらと年間58億円もの公金をばら撒いてる非効率、こうした補助金は見直しをすべきだろう。金の使い方が勿体無いのだから……。今からでも決して遅くはない、日本の太陽光発電は実際に設置されている量はドイツに抜かれてしまっているが、過去に設置された実例は沢山ある。長期に亘りきちんと発電するかどうかが、一番重要なのだ。
・自然エネルギーから拓けてくる新たな未来
今こそ制度を見直すチャンスだ。成果評価方式に変えてその発電量がきちんと報告として挙がっている仕組みに変えよう。その数字は、直接CO2を出さなかった証拠だ。そして、それをさらに検証して今後どう生かしていくのかを検討しよう。これまでの成果のわからない非効率なばらまき補助金は止めて、正しく成果評価できて、公平で公正な形の地域経済にも貢献する制度へと変更するいい機会だと考えるべきだ。この制度へ変えれば、国民の誰もが自分が使う電力を自然エネルギーに変えることが可能となるだろう。そして、CO2と放射性廃棄物を副産物として売りつけるのが仕事だった電力会社は、分散型電源で生み出される環境負荷のない電力を各地で過不足なく有効利用するためのインフラの管理者として重要な社会的な役割を果たすようになるだろう。太陽光発電など、自然エネルギーからはそんな新たな未来が見えてきている。
0 件のコメント:
コメントを投稿