2008年10月24日金曜日

シリコン供給不足は緩和へ、太陽電池市場で結晶系と薄膜系の力関係が変わる


出典:http://eetimes.jp/article/22446/
 これまで長い期間にわたってシリコン(Si)の供給不足が続いており、
太陽電池パネル・メーカーにとっては行く末を左右する深刻な問題だった。
ただしここにきて世界の主要なシリコン・ベンダーが相次いで増産を打ち
出したことで、供給不足は緩和され始めている。IEEEの主催で最近開催さ
れた太陽エネルギに関するイベントで、コンサルティング会社である米
Navigant Consulting社でプリンシパル・アナリストを務めるPaula Mints
氏は、「シリコンの供給が拡大することで、新興勢力である薄膜系太陽電
池パネル・メーカーは淘汰(とうた)の時期に突入する」と指摘した。
 同氏によれば、「シリコンの供給量は、2010年から飛躍的に増える見通
しである。この結果、結晶系太陽電池メーカーも薄膜系太陽電池メーカー
も、強烈な価格引下げ圧力を受けることになるだろう。特に薄膜系が厳し
い」という。
 シリコンの断続的な供給不足は長年の間、半導体メーカーと太陽電池パ
ネル・メーカーの双方にとって頭の痛い問題だった。最近では2004年から
供給不足状態が発生しており、特に結晶系太陽電池パネル・メーカーが打
撃を受けていた。
 太陽電池パネルの売り上げ規模は、この数年間で急激に拡大している。
しかしその好ましい状況の一方で、シリコンの供給不足が足かせとなり、
結晶系太陽電池パネル・メーカーは、市場に需要があるにもかかわらず製
品を供給できないという状態が続いていた。Mints氏によると、この結果、
2004年にはおよそ93%を占めていたシリコン・ベースの太陽電池パネル
の市場シェアは、2007年には89%にまで落ち込んだという。また同氏は、
2008年には太陽電池産業が半導体産業を追い抜き、シリコンを最も消費す
る産業になると予想する。
 薄膜系太陽電池は、結晶系太陽電池に比べてシリコンの使用量が大幅に
少なくて済む。このため、薄膜系太陽電池メーカーはこれまで、シリコン
の供給が不足する状況下にもかかわらず利益を上げることができた。その
代表格の1社が米First Solar社である。同社はカドミウム・テルル(CdTe)
材料を採用した太陽電池を手掛けており、2007年には太陽電池パネル市場
で第5位に躍り出た。
 ところがここにきて、潮目が変わりつつある。Mints氏によれば、シリコ
ンの供給量は今年(2008年)に入って安定化してきており、2010年半ば
には生産過剰に陥る可能性がある。この状況は、太陽電池パネル市場の上
位10社のうち9社を占める結晶系太陽電池メーカーにとって好材料になる。
 これまで結晶系太陽電池メーカーは、シリコンの使用量を最小限に抑え
るために苦心し続けてきた。米SunPower社でプレジデントを務める
Richard Swanson氏によると、太陽電池パネル市場において売上高で10番
手に位置付ける同社は、太陽電池セル当たりのシリコン使用量を従来の
12gから半分の6gにまで減らしたという。
 一方で、薄膜系太陽電池メーカーである米Signet Solar社でプレジデント
を務めるRajeeva Lahri氏は、薄膜系太陽電池の展望について楽観的な見方
を変えていない。同氏は、太陽電池市場全体に占める薄膜系太陽電池の割
合が、2020年までに40%に達する可能性があるとしている。
 またSignet Solar社に製造装置を供給する米Applied Materials社で最高技
術責任者(CTO)を務めるMark Pinto氏は、中立的な見解を示し、結晶系
太陽電池と薄膜系太陽電池はそれぞれ、太陽電池市場の異なる分野で使わ
れるだろうと述べた。
 薄膜系太陽電池技術は十分な資金援助を得たこともあり、ここ数年で20
社を超える新興企業が誕生した。米国立再生可能エネルギ研究所(NREL:
National Renewable Energy Laboratory)内にあるNational Center for
Photovoltaicsでディレクタを務めるLawrence Kazmerski氏によると、米
国の企業や投資家は、2007年に薄膜系太陽電池技術に対して3億5000万
米ドルもの資金を投入したという。「米国政府による太陽電池関連投資の
2倍以上である。それだけの巨額投資が、薄膜系太陽電池技術に注がれた
のだ。新興企業のうち、すべてが生き残れるわけがない」



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