2008年10月6日月曜日

太陽光、次代照らす〈環境元年 太陽ウオーズ1〉


スペイン・セビリア郊外にあるタワー式太陽熱発電所「PS10」。
地上に配置された624枚の鏡が反射光をタワー上部に集め、
その熱で蒸気をつくり発電する=伊藤恵里奈撮影


出典:http://www.asahi.com/eco/TKY200810050204.html
 「欧州のフライパン」と称されるほど、スペイン南部のアンダルシア地方は
日差しが強い。乾いた荒れ地を太陽が焦がす。
 その一角、セビリア郊外に一辺10メートルの巨大な鏡が624枚並んでい
る。角度を変えて太陽の動きを追い、高さ115メートルの塔に反射光を集め
る。光が集中する一点は、まぶしくて直視できない。
 総合テクノロジー大手アベンゴアグループが造った「PS10」と呼ばれる
集光型の太陽熱発電所(1万キロワット)だ。世界初の商業プラントで昨年、
始動した。
 太陽熱で水を蒸気に変え、タービンを回す。火力発電と同じ仕組みだ。担当
の技術者フェルナンデス氏は「この地域は快晴が多く、年間280日も運転で
きる」と語る。
 すぐ横にある2倍規模のPS20も近く運転を始めるほか、太陽熱によるさ
まざまな発電方式の施設を建設し、12年には8平方キロの敷地に計30万キ
ロワットの総合発電所をつくる。日本の黒部第四発電所級の大型水力発電所の
出力に相当し、太陽電池のパネルを10万軒の住宅につけた量にあたる。
 太陽熱発電は太陽利用の幅を広げる先端技術だ。スペインは、光を電気に換
える太陽電池による発電でも急伸し、世界を驚かせている。
 太陽電池の累積導入量は、05年には6万キロワットだったのが07年には
68万キロワットと増え、今年末には180万キロワット、全発電量の0.5
%ほどになる見通し。05年にドイツに抜かれて導入量世界2位となった日本
では今年、20万キロワットほどの増加にとどまるとみられ、スペインでの増
え方は日本の約5倍に達する。
 もともとスペインは風力発電が約10%を占める風力大国だった。欧州では、
風力が拡大して一般的な電源の一つとなる一方、立地の制約も出てきたため、
支援の力点は太陽光に移りつつある。日差しに恵まれたスペインは、その流れ
の最前線にある。
 発電での二酸化炭素(CO2)排出量は、太陽電池の場合、製造過程で出る
分を含めても石炭火力の18分の1ほどでしかない。地球温暖化対策として有
効なのに加え、原油の高騰もあり、最近の世界の太陽電池市場は年40%の伸
びを示している。07年の生産量は370万キロワットで、03年の5倍に膨
らんだ。
 「石油が枯渇する時代に、欧州の人は太陽光発電を『現代の油田』と考えて
いる」。日本のトップメーカーであるシャープの浜野稔重(とししげ)副社長
は、そう話す。
 欧州には、日差しの強い北アフリカ諸国で発電して南欧に電気を送る「スー
パー送電網」計画もある。次に狙うのは「サハラ砂漠の太陽」だ。
 石油にどっぷりつかってきた米国でさえ、エネルギー省が太陽電池の技術開
発支援などに乗り出した。エネルギー資源の中東依存からの脱却という意味も
ある。州レベルでも「100万戸ソーラー・ルーフ計画」(カリフォルニア州)
といった強力な支援策を設ける動きが続く。
 欧州の業界団体などの推計では、世界の発電量のうち太陽光は30年には最
大14%を占め、関連産業の市場規模は、デジタルカメラや携帯電話などデジ
タル家電全体に匹敵する約70兆円にのぼる。
 市場は爆発前夜にある。


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