出典:http://www.j-cast.com/tv/2008/10/23029103.html
シリーズの第2弾は「太陽電池」。国谷裕子が解説する。「太陽光をすべて
電力に換えることができれば、わずか1時間で世界中が1年間使用する電力を賄
うことができる。しかもクリーン。次世代のもっとも有望なエネルギー源とい
われています」
かつて日本はこの分野では圧倒的な優位にあった。しかし、世界のメーカー
トップ5で、2005年には4つを占めていたのが07年には2社になった。太陽電池の
位置づけが大きく変わってきた。震源地はヨーロッパである。
スペイン政府の大胆な戦略
スペインではすでに500基を超える太陽光発電所がある。運営には電力会社
のほかにベンチャー企業が参入。6基を運営する企業の売り上げは600億円を超
えるという。なぜスペインなのか。
スペイン政府は4年前、大胆なエネルギー戦略を打ち出した。電力会社に補
助金を出し、電力会社は25年間既定の値段で太陽光発電の電力を買うことを義
務づけたのだ。これまで普及を阻んできた「火力発電の6倍」という建設コス
トを、税金を投入して乗り切ったことになる。
「スペインには資源がない。太陽光発電を戦略的に普及させることで、将来
のエネルギー問題を解決しようと考えている」と政府関係者はいう。
ヨーロッパがリードする太陽光発電を支える太陽電池の市場は、07年には
1.7兆円だったが、12年には6.5兆円になるとみられる。これに、中国、インド
などの企業が続々と参入。ナイジェリア、アラブ首長国連邦など産油国も加わ
る。「石油は有限、太陽は無限」というのだ。
日本政策投資銀行調査部の清水誠は、「ヨーロッパの補助金政策が、市場の
構造を大きく変えた。これまで、研究・試作レベルにあった太陽光発電を、一
気に大量生産時代に移行させた。そこで、いかにパネルを安く作るかになるが、
スケールメリットにスピードも必要になった」という。
国谷は、「技術力がある日本企業に出遅れ感があるのはなぜ?」
清水は「大量生産という市場構造の変化に対応できなかった」とみる。「急
成長しているドイツ、中国、インド企業に共通しているのは、世界規模で投資
マネーを集めて一気に大きくなったこと。足りない技術は他のメーカーとの連
携とか、日本企業とは戦略が異なる」。
日本企業も動く
追い上げは急だ。3年前新規参入したインドの「モーザーベア社」は、もと
はDVDのメーカーだったが、未経験の太陽電池に3年間で3000億円以上を投資、
一大メーカーに。近く稼働する新工場は、米メーカーから丸ごとノウハウを買
った。機械一式100億円、技術者100人を海外から集めた。資金力と早さで、他
を圧倒した。
ラトゥル・プリ社長は若干36歳だが、「太陽電池の将来性は50兆円規模だ。
さらに投資して2年後には世界トップ3になる」と断言する。
日本企業も動いている。昭和シェル石油は昨2007年、宮崎に太陽電池工場を
建設すると発表。ヨーロッパや国内販売を目指す。今後1000億円を投じ、5年
以内に経営の柱にしたいという。「石油は横ばいからやがて減る」(新美春之
会長)と。
半世紀の実績があるシャープは、新たな戦略を打ち出した。自ら発電所を建
設して電力会社になろうというのだ。まずはイタリアで、また、関西電力との
協力で大阪に。町田勝彦会長は、「太陽電池は油、工場は油田」だという。
技術はトップにありながら、世界市場での「出遅れ感」が気になる。社会全
体が太陽電池の将来性をどれだけ認識しているか、もあるかもしれない。
*NHKクローズアップ現代(2008年10月22日放送)
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