出典:http://jp.ibtimes.com/article/biznews/081029/23601.htmlhttp://www.mizuho-ir.co.jp/column/kankyo081028.html
洞爺湖サミットをはじめとする環境対策機運の高まりもあり、ここ数ヶ月、太
陽光発電にまつわる報道が急増している。太陽光発電は、自然エネルギー利用
の代表格の一つであり、日本では、住宅や公共・産業建物の屋根に設置し、発
電した電力は建物所有者が自ら使用し(自家消費)、余剰となった電力は、電
力会社に通常の電力料金と等価で買い取ってもらう方式が代表的かつ一般的で
ある。このような従来の方式に加え、ここにきて「メガソーラー」と呼ばれる
大規模太陽光発電の導入に対する動きが脚光を浴びている。
メガソーラーとは、出力1,000kW(=1MW(メガワット)=0.1万kW)以上の規
模を有する太陽光発電に対する総称で、強力な導入支援策を講じている海外諸
国では既に相当量導入されている。必ずしも技術的に明確な定義があるわけで
はないが、規模の大きさに加え、太陽光発電を発電所(発電事業)として利用
していることが多いことが、その特徴である。海外では専ら発電事業用途で、
一部地域では投資対象にもなっている。
このような世界的な動きに対し、導入環境の差異があるにせよ、メガソーラー
に対する日本の動きは立ち遅れているのが現状で、NEDOによる実証事業、環境
省による支援事業、および一部民間企業による先駆的導入(いずれも数件)が
見られる程度である。
そのような中、日本の電力会社自らが率先してメガソーラーを導入しようとす
る動きが始まった。電気事業連合会(電事連)は、本年9月に「2020年度まで
に電力10社合計で約30地点・14万kW(=140MW)を導入」という『メガソーラ
ー発電導入計画』を発表した。各電力会社からも関西電力(堺市に約2.8万kW
(一部はシャープと共同))、東京電力(川崎市と共同、約2万kW)など発表
が相次いでいる。北海道電力も稚内市と共同で0.5万kWのメガソーラープロジ
ェクトを手がけている(NEDO実証事業)。
電事連が掲げる14万kWという規模は、日本の太陽光発電導入目標や海外諸国の
実績と比較すると決して大きくはないが、それでも約4万軒の家庭での電力消
費量に相当する電力発電である。電力会社による太陽光発電の導入はこれまで
にも小規模なシステム、あるいは実証研究目的の導入は数多く実施されてきた
が、電力会社による発電所という位置づけの導入は全くと言っていいほど行わ
れていなかった。この方向転換は、小規模分散型一辺倒であった日本の太陽光
発電の利用形態に、メガソーラーという選択肢が加わり、発電所としての利用
が受け入れられつつあることの証と言えよう。
さて、ここで海外におけるメガソーラーの概況を紹介しよう。大規模太陽光発
電を紹介・掲載しているWebサイト等の情報を積み上げると、これまでに世界
で導入されたメガソーラーは500件を上回り、合計出力は170万kWを上回ってい
る。ここ1年間の導入量は急速に増加しており、2007年には合計約40万kWのメ
ガソーラーが導入され、2008年はこの9月までに100万kW以上が導入されている。
なかでも、2008年は出力1万kWを上回るメガソーラーが続々と導入されている
ことも特筆すべきであろう。現時点で最も規模が大きいのはスペインの
Olmelidiaプラントでその出力は6万kW、このほかスペインには約270のメガソ
ーラーがあり、総出力は100万kWを上回る。これに次ぐのがドイツで、約170
のメガソーラーがある(総出力40万kW以上)。これらの国の大きな駆動力は、
“フィード・イン・タリフ”制度(太陽光発電等による発電電力を高価で買い
取る制度)である。
これら二国ほど極端ではないが、メガソーラーに対する動きは欧州のみにとど
まらず、米国やアジアでも続々と導入されている。フィード・イン・タリフ制
度を導入している韓国ではここ2年で少なくとも10件以上のメガソーラーが実
現し、日本でも馴染みのあるサムスングループやLGグループなどがメガソーラ
ー(それぞれ1.8万kWおよび1.4万kW)のデベロッパーとして参入し始めている
ことも興味深い。
このように、フィード・イン・タリフというやや特殊な枠組みを契機としてい
るが、急速に広がり始めたメガソーラーは今では世界全体、少なくとも先進諸
国(IEA PVPS(※1)加盟国)における太陽光発電の全導入量の10%程度を占
めるに至っている。
太陽光発電はこれまで、電力の安定供給という使命を負う電力会社にとっては、
出力規模が大きくなればなるほど出力変動等に対する懸念が大きくなる厄介者
で、今でもその懸念が完全に払拭されているわけではない。しかし、世界的に
はメガソーラーは既に実用レベルに達しており、日本の電力会社もいよいよ乗
り出してきた。来年度にはメガソーラー導入に対する支援事業も検討されてい
る。この流れをうまく活かし、従来の自家消費用の太陽光発電に続きメガソー
ラーを広めていくことは、日本の太陽光発電産業の発展にとっても絶好の契機
となり、「太陽光発電世界一」の座の奪還にとって大きなドライビング・フォ
ースとなろう。
メガソーラーには相応の面積が必要であるが、隣国である韓国を見ると「日本
は国土が狭い」という言い訳はもはや通用しない。廃棄物処分場の跡地や開発
が放棄された工業団地など、日本国内にもメガソーラーの候補地が少ないわけ
ではない(欧州では軍事基地・飛行場跡地などもメガソーラーに利用されてい
る)。電力会社だけが主役となるのではなく、土地や資源、そしてNEDOの実証
試験を踏まえた優れた技術の活用により、世界のメガソーラーブームに追いつ
き、追い越す、日本のメガソーラー時代が到来するのではないか。
余談となるが、このような世界のメガソーラーの動きを俯瞰しつつ、著者らは
現在、砂漠等未利用地における10万~100万kWの超大型太陽光発電システム
(Very Large Scale Photovoltaic system:VLS-PV)の可能性を研究する国際
協力プロジェクト(IEA PVPS Task8(※2))を実施している。プロジェクト
発足時は1MW程度のメガソーラーですら稀で、VLS-PVなど「夢」と思われてい
たが、今では世界のメガソーラーの動きの延長にあるものと感じられるよう
になった。このTask8による研究成果は別の機会に紹介することとしたい。
※1 IEA PVPS:IEA(国際エネルギー機関)傘下で実施されている「太陽光発
電システムに関する実施協定」。現在、日米欧など19ヶ国と2機関が加盟。
※2 IEA PVPS Task8:IEA PVPS傘下のプログラムの一つ「砂漠地域における超
大型太陽光発電システムの可能性研究」。日本がプロジェクト幹事国を担当し、
著者らが議長を務める。
(環境・資源エネルギー部 河本 桂一)
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