出典:http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200810270019a.nwc
【プロフィル】桑野幸徳
くわの・ゆきのり 熊本大理卒。1963年三洋電機入社。取締役、常務な
どをへて、2000~05年社長。この間、太陽電池、半導体、デジタルカメ
ラ、携帯電話などの技術勝開発を統括。現在は同社客員。日本を代表する太陽
電池研究者で、現職は04年から。オプテックス取締役、大和ハウス工業監査
役なども務める。福岡県出身。67歳。
□太陽電池のコスト低下どこまで?
■原発並みの発電単価、実現可能
--政府は、地球温暖化対策から太陽光発電を2005年度の35万キロワ
ットから20年に10倍、30年に40倍という目標を掲げています。実現す
るには割高な発電コスト低下が不可欠ですが、太陽電池の技術開発はどの程度
進んでいますか
「太陽光を電気に変える光電変換効率は日本メーカーが依然、世界一を走っ
ています。代表的な結晶シリコンを用いた電池の効率は現在16~18%、最
高で22%以上で、30年前の石油危機時と比べて4倍です。家庭用システム
は1992年に登場し、当時は3キロワットの製品で1000万円程度もしま
した。国の半額補助が始まった94年でも600万円でしたが、今では200
万~250万円まで下がっています」
--今後の目標は
「1キロワット時当たりの発電単価は現在、金利などを除いて30円強です
が、国の目標は10年に23円、20年に14円、30年に今の原子力発電並
みの7円です。これは太陽電池の寿命20年で計算した数字で、実際は20年
以上もつので、もっと下がっています。実は、私は92年に大阪の自宅で日本
で初めて家庭用システムを導入しましたが、今でも立派に稼働しています」
≪効率「2倍」が目標≫
--原発並みにまで下げるには、どのような技術開発が必要ですか
「NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の目標は効率2倍です。
寿命を2倍にしたり、原材料のシリコンの厚さを半分にするなどです。変換効
率と生産性は地道に改善していくしかありません。シリコンの用途の半分は半
導体で、半分が太陽電池です。太陽電池の需要が世界的に伸びているためシリ
コンのコストも下がっていきます。これらによって、7円という目標は必ずで
きると思っています」
≪需給は1、2年で安定≫
--最近はシリコンの調達難がいわれています
「近年、世界的に太陽電池用が伸び需給が逼迫(ひっぱく)したためです。
シリコンメーカーも増産していますから、1、2年で需給は落ち着くでしょう。
シリコンは世界中に存在していますから、足りなくなることはありません」
--太陽電池生産の世界トップだったシャープが昨年、ドイツのQセルズに
抜かれました
「ドイツは再生エネルギー法を制定し、電気料金を5%上げると同時に、そ
れを原資に太陽光発電の電力買い取り料金を3倍に上げたことで、爆発的に需
要が拡大しました。日本メーカーも太陽電池を輸出していますが、ドイツは域
外製品に関税をかけていますので割高となり、トップを奪われました。これに
対応し、シャープや三洋電機などは旧東独などで組立生産を始めていますので、
シェアも上がっていくでしょう。アジア諸国の追い上げも油断できませんが、
かつての日本もドイツもそうですが、現在は補助金で普及している状況で、い
ずれコストが下がればそれもなくなるでしょう。そうなると技術開発の勝負と
なり、日本メーカーが有利だと思います」
≪「京都議定書」に相当≫
--政府は来年度から家庭用のシステム導入に補助金を復活する計画です
「国は94~05年度まで半額補助し、その間、約30万軒が導入しました。
3キロワットのシステムを導入した場合、年間1.7トンの二酸化炭素を削減
できます。全住宅の屋根や空き地に太陽電池を設置したとすると、1.3億ト
ン削減できる計算です。この量は日本が京都議定書で約束した削減量に相当し
ます」
--コストが7円になれば、電力会社も太陽光発電に積極的になります
「そうです。私は世界で太陽光発電所を設置し、それを送電ロスのない超電
導送電網でつなぐ『GENESIS』という計画を20年前から提唱していま
す。これが実現すれば、世界の全砂漠面積の4%に発電所を設置すれば全世界
の電力需要を賄えます」
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