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2008年10月10日
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Sarah Lai Stirland
最大7000億ドルの公的資金で不良資産を買い取る「金融安定化法案」[正式名は「緊急経済安定化法案」]が10月3日(米国時間)に米下院議会で可決され、ブッシュ大統領の署名によって成立したことに、米国の一般市民は不満かもしれない。
だが、代替エネルギー業界は同法案の成立に喝采を上げた。金融安定化法には同業界に対する優遇税制措置の延長が盛り込まれていたからだ。この優遇措置をめぐっては、2008年末に期限切れになるおそれがあったため、業界幹部の懸念を呼んでいた。
3日に成立した金融安定化法には、風力発電企業に対する優遇税制措置の1年間延長と、住宅用および商用の太陽発電設備の設置に対する30%の優遇税制措置の8年間延長などが盛り込まれていた。
太陽エネルギー産業協会(SEIA)の会長、Rhone Resch氏は声明の中で以下のように語っている。「この法案は、エネルギー自立に向けた長い道のりにおける大きな一歩であり、太陽エネルギーが米国のエネルギーの未来に重要な役割を果たすことをはっきりと示すものだ」
「今回の太陽発電に対する税額控除の長期延長は、米国内の太陽発電産業に数十万単位の雇用を創出する一方で、米国の家庭や企業、地域社会にクリーンで手頃な価格の、炭素を排出しないエネルギーを提供する」
リニューアブル(持続的利用可能)エネルギー業界は、議会が優遇税制措置を延長せずに休会するのではないかと、1年前から気を揉んでいた。各企業の関係者は、こうした懸念が現実になっていたら、資金調達が一層困難になり、業界の成長の妨げになっていたと述べている。
今回成立した法案のなかには、地熱、太陽熱、潮力、波力、プラグイン・ハイブリッド、エネルギー効率化など広範囲な環境技術への関心を後押ししうる各条項も含まれている。
例えば、太陽、潮力、波力については、投資控除が2016年まで延長された。プラグイン・ハイブリッド車を購入した者には、最初の25万人まで、最大7500ドルの控除が認められる。電力消費をリアルタイムで監視、双方向でやり取りできる「スマート・メーター」の導入も税制で優遇された。
なかには、大気汚染対策が進んでいない石炭産業に25億ドルの優遇税制措置をとったことや、二酸化炭素排出量に関する優遇税制が十分でないことなどを批判する声もあるが、環境系企業は総じて今回の法律制定を歓迎している。
「われわれは喜び、安堵した」と語るのは、10件に及ぶ代替技術投資など総額25億ドルを運用しているFoundation Capital社のジェネラル・パートナー、Paul Holland氏だ。「この法は代替技術に、更なる関心と投資を呼び起こすとわれわれは確信している」
[過去記事「「米国経済を救うのは環境技術バブル」富豪投資家の主張」と「「環境技術を軸に経済の再編成を」著名投資家インタビュー」では、経済を環境技術を軸に立て直すべきだという主張について紹介している。
後者のJanszen氏は、住宅バブルによる損失を穴埋めするのに充分な「仮想的な価値」(fictitious value)を創出できるのは、一時的にせよ環境関連技術が唯一の分野であり、「金融、保険、不動産」経済から脱出する構造改革が必要と主張している]
一方、あまり報じられていないが、金融安定化法には、木製の矢を製造するメーカーや、プエルトリコの映画業界に対する優遇税制措置の適用、羊毛の輸入に対する関税適用期間の延長といった条項も盛り込まれている。
ただし、法案をこうした優遇税制と抱き合わせにしたことは、下院の票決に大きな影響を及ぼさなかったようだ(同法が可決されて以来、その成立に至る詳細が続々と明らかになっているが、それを見る限り)。
たとえば、ウェブを利用して連邦議会の活動状況を追跡する市民プロジェクト『OpenCongress』は、修正条項の一部を支持した下院議員のリストをまとめているが、修正法案の提出者とその投票パターンの間に明らかなつながりは確認できない(点呼投票による最終票決はこちらを参照のこと)。修正法案の提出者の多くは、3日の投票で最終的に反対票を投じている。
一方、『National Journal』内で議会の動向を伝える『CongressDaily』の記事によると、修正法案に賛成票を投じた民主党議員は、大統領候補のBarack Obama上院議員に電話で説得され、一方、反対から賛成に回った数人の共和党議員は、米商工会議所の会員に電話で説得されたらしい。
{この記事には、別の英文記事の内容も統合しています}
[日本語版:ガリレオ-矢倉美登里/合原弘子]
WIRED NEWS 原文(English)
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