出典:http://eco.nikkei.co.jp/column/eco-us/article.aspx?id=MMECci000027102008
サンフランシスコから小型機に乗り1時間半、海軍基地から通信・バイオ産
業都市へと変革を遂げたサンディエゴで、太陽電池で最大級となる展示会が開
催された。今回は、この「ソーラーパワー・インターナショナル」の様子をご
案内します。
■ソーラーパワー・インターナショナル
会場でも注目度が高い世界トップシュアを誇る独Q-CELLS社
太陽光発電協会(Solar Electric Power Association:SEPA)と太陽光工業
会(Solar Energy Industries Association:SEIA)の2非営利団体により始ま
ったソーラーパワー・インターナショナルは2004年に遡る。
複数の言語が飛び交っていた開始当時の動員数1100人は、2006年には6000人
を超え、今年は450を超える展示企業、世界70カ国から動員数1万5000人を超え
る規模へと成長した。
半導体製造装置メーカからいち早く太陽電池市場に参入した
シリコンバレー企業・アプライドマテリアル社
会場には、モジュール、セル製造メーカーや薄膜製造装置、材料メーカなど
といった日系企業に加え、ドイツ、台湾は自国企業を集めた独自のパビリオン
を設置し注目を集めていた。
今年7月に開催された半導体関連の展示会であるセミコンウェストに、太陽
電池分野としてインターソーラーが加わったが、 ソーラーパワー・インター
ナショナル の会場規模は、3倍から4倍といった印象を受けた。
■注目を引く企業
会場で注目を集めていた企業のひとつを取り上げてみる。サンフランシスコ
を拠点とし、非シリコン系集光型光発電システム企業にグリーンボルト社があ
る。集光型光発電システムは、薄膜セルと同様にアメリカが力を注いでいる領
域でもあり、市場は、2020年までに太陽光発電全体の2%相当の 6GW規模へ拡
大するものと見込まれている。米エネルギー省は、2020年までに4セントから
6セント(/kWh)の実現を目指している。
今年8月、シリーズBとして3000万ドル規模の投資を受けた同社は、カリフォ
ルニア州エネルギー委員会が推進するエネルギー研究計画(PIER)を通じ、25万
ドルの補助金を取得。その技術的な信頼性の高さを受け、カリフォルニア州の
電力会社と契約し、世界で最もコスト競争力の高い集光型光発電システムの実
証に向け、2009年までに2MW規模の発電テストに取り組んでいる。
グリーンボルト社の集光板とレシーバ
太陽光発電の普及促進に、既存電力との充分な価格競争力が不可欠である事
はいうまでもない。同社は、独自の電力変換率40%を誇る集光板とトラッキン
グシステムを開発し、集光板を配置するデザイン自体に特許を取得しており、
従来の太陽光発電コストと比し、約50%削減に成功している。
従来の集光型発電システムの多くは、住居地から遠くはなれた地域に設置さ
れ、また広大な土地が必要である。この事は、大規模な工事や送電施設の設置
といった付帯コストを繋がり、トータルコストを押し上げる結果となっている。
この点からも、同社の優位性を見る事ができる。
■アメリカ企業の声
展示会会場前では、複数の言語が飛び交っていた
何と言っても気になるのは、今後の市場見通しであろう。
9月26日のコラム「金融危機が及ぼす環境ビジネスへの影響」でも取り上げ
た金融危機の影響は、日増しに実体経済へとその影響が拡大している。
展示企業20社程度に、今後の見通しに関するコメントを求めてみた。最も多
かった反応は、ひと言で「Shaky」。シェイキーには、”不安定や不確性” と
言った意味から “不安や病身” と言った幅広い意味が含まれる。ひと言で表
す上で、最も適した言葉かもしれない。
但し、それぞれの反応を分野別に見る場合、モジュール製造、装置、材料、
パネルを設置するインテグレータと多少反応が異なっている。それぞれの製品
スパン(受注から出荷まで)や市場構図の違いによるものと言えよう。 モジ
ュール、セル製造メーカは、金融危機の影響は否定しないまでも、強気の見
通しであった。
アメリカ時間の10月3日、最大7000億ドル(約75兆円)の公的資金を投じる
金融安定化法_が成立した事は周知の通りである。この中で、再生可能エネル
ギーへの税還付金も承認され、太陽電池関連への投資(ITC _)には、商業ビ
ル、住居向けを含め30%の還付率を8年延長が認められる事となった。
太陽光工業会は、この税還付金の延長承認を受け、44万件の新規雇用を生
み、3,250億ドル相当の投資に繋がると賞賛している。会場でインタビューを
行ったアメリカ企業の中でも、ITCの延長に胸を撫で下ろす人もいれば、まだ
「明るい見通しと時期尚早だ」と言う反応とまちまちであった。
13日の月曜日、突然会場に姿を表したシュワルツェネッガー州知事は、「太
陽電池市場の成長を止めてなならない。(Solar Can't Be Stopped)」とし、
2020年までの地球温暖化ガス削減に向けた再生可能エネルギーへ重要性を改め
て訴えていた。
11月4日に控え、オバマ上院議員候補が優位と見込まれる大統領選挙、3回の
ディベートの中でも再三に渡り再生可能エネルギーの重要性に言及している。
今回のITCの延長に加え、今後どのような政策が新体制の中で立案・施行され
るか、まさに不確実性からの脱出への可能性は目の前に迫っていると言えよう。
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