2008年11月15日土曜日

「太陽電池は油田だ」――シャープ・町田会長


出典:http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/0811/14/news009.html
低炭素社会の実現に向けた取り組みを語るシャープの町田勝彦会長

「堺コンビナートの挑戦」という町田会長の言葉に表わされるように、シャー
プが建設中の堺新工場には地球環境に配慮した最新技術が惜しげもなく盛り込
まれている。特に工場の屋根などに張り巡らされた太陽光発電システムは地球
を救う可能性を秘めめるという。

 世界中から有識者が集まり地球環境保全に対する情報通信技術(ICT)のあ
り方について議論するセミナーイベント「ICT・CIO・環境・ITガバナンス2008」
が11月7日に早稲田大学で開かれた。基調講演にはシャープの町田勝彦会長が
登壇し、エネルギー削減に向けた自社の取り組みを紹介した。町田氏は「日本
人の粘り強さがあれば温暖化問題は解決できる」と力を込めた。

 同社が大阪・堺に建設中(2009年に稼働開始予定)の液晶パネル新工場は、
地球環境に配慮した工場として知られる。「堺コンビナートの挑戦」という町
田氏の言葉通り、17の関連会社が立ち並ぶ敷地内には最先端の環境技術が惜し
げもなく活用されているという。

 その1つが太陽電池を用いた太陽光発電システムだ。太陽電池とは光エネル
ギーを直接電力に変換する電力機器のこと。コンビナートの各工場の屋根上な
どに太陽光発電システムを設置し、コンビナート内で自家消費電力として使用
する。太陽光発電は原子力発電や水力発電と同様、発電過程で二酸化炭素
(CO2)を排出しないため温暖化防止にもつながる。既に亀山工場で同様の取
り組みがなされており、通常の発電と比べて約40%のCO2を削減したという。
町田氏は「(堺では)さらにCO2排出量を亀山の半分にする」と意気込む。

結晶型から薄膜型へ
 同システムに使われる太陽電池もエコに貢献する。現在の太陽電池マーケッ
トでは多結晶シリコン型の太陽電池が主流だが、シリコンの材料不足が続く中、
従来と比べてシリコン使用量が100分の1程度で生産工程が短く、太陽の光を電
気に変換する効率も高いという「経済的な」薄膜型が脚光を浴びている。シャ
ープでは既に奈良の葛城工場で薄膜型の量産を行っているが、堺の液晶パネル
工場に併設する太陽電池工場でも生産する。堺コンビナートの発電システムで
使う太陽電池はオンデマンドで調達できるというわけだ。

 そのほか堺コンビナートでは、全工場にLED照明を約10万台導入して消費電
力の削減を図ったり、エネルギー管理センターを設置しすべての生産稼働状況
をモニタリングすることでエネルギーの無駄を排除したりするなど、積極的に
環境問題に取り組む。

資源不足を“創エネ”で解消
 環境問題への対策というと、いわゆる「省エネ」を考えがちである。しかし
町田氏は「省エネと並んでエネルギーを生み出す“創エネ”が重要だ」と述べ
る。こうした背景には中国やインドなど新興国によるエネルギー消費の増大と、
それに伴う地球規模の資源不足がある。日本エネルギー経済研究所の調査によ
ると、2005年に103億トンだったエネルギー消費量は、2030年には165億トンに
なるという。特にアジア地域においては32億トンから65億トンと約2倍に増大
する。エネルギー消費を抑えることはほぼ不可能であるため、石油など既存の
資源に代わる新たなエネルギーが必要なわけだ。

堺コンビナート太陽光発電施設の完成イメージ
 シャープでは、2010年4月までに堺工場で太陽電池の年間生産能力を1Gワッ
トまで拡張する計画を立てる。この生産を20年間続けると、石油換算で約3000
万バレルに相当するエネルギーがつくられるという。

 「もし堺工場が50個あれば、日本の年間原油輸入量にあたる15億バレルを補
うことができる。まさに太陽電池は油田である」(町田氏)

 太陽電池の発電コストはどうか。太陽電池は温暖化ガスの排出は抑えるもの
の、火力や原子力などのエネルギーに比べて割高な点が課題である。シャープ
は、2007年に1kWh当たり46円だったコストを、2010年には23円、2030年には
7円に下げるという目標を掲げる。「2010年の目標値はクリアできるはずだ。
23円になれば(一般家庭での太陽電池の活用も進み)もっと身近なエネルギー
になる」と町田氏は強調する。

今こそ日本の粘り強さを
 環境問題に対するこうした地道な取り組みは、日本では今に始まったことで
はない。森林ジャーナリストである田中淳夫氏の著書『森林からのニッポン再
生』によると、江戸時代ははげ山が多く、第二次大戦後の植林で緑化が進んだ
結果、現在では国土面積の67%にあたる約2500万ヘクタールが森林だという。

 「国土の半分以上を占める森林は、日本が長きにわたり環境問題に取り組ん
できた産物だ。この粘り強さがあれば地球温暖化問題は解決できる」(町田氏)



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