2008年7月15日火曜日

シリコンバレーは今やソーラーバレーへ


http://www.toyokeizai.net/business/industrial_info/detail/AC/6b7145b2b3ca83b69728cbb1aafa51aa/
 米国では「クリーンテック」と呼ばれる環境ビジネスが急速に台頭し始めて
いる。環境対策“後進国”と揶揄される米国だが、ビジネスとなると話は別。
すでに、ベンチャーキャピタル(VC)がこぞって同分野への投資をしている
一方で、クリーンテックベンチャーが続々と誕生している。
 クリーンテックとは、太陽光発電や風力、バイオ燃料など代替エネルギーや
燃料電池、電気自動車、浄水といった地球環境保護分野をひっくるめた総称。
2000年代初頭から早耳のVCなどが注目していたが、06年になって急速
に投資額が増えた(右棒グラフ参照)。
http://www.toyokeizai.net/public/image/2008070900134922-2.jpg
 シリコンバレーの名門VCも我先にと出資を急ぐ。中でも積極的なのが、ク
ライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)だ。06年
に6億ドルの新規ファンドのうち1億ドルを同分野へ充当、今年5月にはつい
に5億ドルの専門ファンドまで立ち上げた。米報道によると、これまでに26
社に対して総額2・7億ドルを出資、22人いるパートナーのうち半数以上が
同分野への投資にかかわっているという。
 KPCBを率いるジョン・ドーア氏はグーグルやアマゾン・コムなどに投資
してきた最有力投資家の一人。そのドーア氏が最近ではすっかり環境分野の投
資家として知られるようになり、アル・ゴア元米国副大統領が立ち上げた投資
会社の諮問委員にも就くほどだ。

藻からバイオ燃料? 開発段階で250万ドル
 サン・マイクロシステムズの創業者でKPCB出身のビノッド・コースラ氏
も自ら設立したコースラ・ベンチャーズを通じて関連企業へ続々と出資。米メ
ディアに積極的に登場し、クリーンテック分野の有望性について語っている。
 微細藻類を利用したバイオ燃料のオーロラ・バイオフュエルズはVCからの
出資を受けたベンチャーのひとつ。カリフォルニア大学のビジネスコンテスト
で優勝して06年に設立した同社は、これまでに3社から総額250万ドルの
出資を受けた。同社の技術はまだ研究開発段階で商業化のメドはたっていない。
それでも、「VCにとってクリーンテックは『次の大きなビジネス』という期
待感が大きい」(共同創設者のギド・ラダエリ氏)。
 一方で、太陽光発電を中心に、上場する企業も出てきた。06年12月に上
場したファースト・ソーラーの時価総額は今や2兆円超。「今のVCの投資額
を考えると、今後も新規上場(IPO)が増えることは間違いない」とクリー
ン・エッジ代表で『クリーンテック革命』著者のロン・パーニック氏は期待を
膨らませる。
 クリーンテックに注目するのはVCだけではない。創業者のラリー・ページ
氏らが個人で電気スポーツカー「ロードスター」を手掛けるテスラ・モーター
ズ(関連記事)に出資するなど、独特なエコIT企業であるグーグルは、昨年
11月末に「REC<C」と名付けた環境関連プロジェクトを発足させ、「0
8年度には何千、何百万ドルの資金を代替エネルギー分野の研究開発に振り向
ける」と発表した。
http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/2ae333b4382b7c26cd0ce9c53a386394/
 データセンターに膨大な電力を利用するグーグルにとって、電力節減は重要
な経営課題でもある。すでに、太陽光発電のeソーラーなど数社に出資。さら
に数年内には、サンフランシスコ市全土の使用電力に相当する1ギガワットを
代替エネルギーによって発電するという壮大な目標まで掲げている。
http://www.toyokeizai.net/business/industrial_info/detail/AC/6b7145b2b3ca83b69728cbb1aafa51aa/page/2/
 シリコンバレーを中心にクリーンテック分野が盛り上がっている背景を老舗
VC、USベンチャー・パートナーズのアラティ・プラブヘイカー氏は「ガソ
リン価格の高騰などに伴って消費者の関心が高まったことで新技術への市場ニ
ーズが膨らんだことが大きい」と分析する。
 確かに太陽光発電などは半導体製造技術の応用。関連企業の多いシリコンバ
レーにはピッタリだ。また、ナノテクなど技術があっても応用先がなく“持て
余していた”ところへ環境保護という応用先が登場、「新興企業が続々と誕生
するのに必要なインフラが整っていた」(シリコンバレーにあるVC、ノベン
ティのパートナー・石井正純氏)。
 ノベンティでも06年に専用ファンドを組成し、出資先を募ったところ80
社以上の案件が殺到。「毎日のように案件が持ち込まれるほど」(石井氏)、
関連企業は増えている。
 政府による環境保護対策の加速も発展を後押ししている。米国政府が保護対
策に消極的だが、州政府は関連プロジェクトへの出資などさまざまな政策を打
ち出している。中でも先行しているのが、シリコンバレーのあるカリフォルニ
ア州だ。
 06年にはシュワルツェネッガー知事の号令の下「100万軒のソーラール
ーフス計画」と呼ぶ太陽光発電普及促進策を法制化。17年までに総額330
億ドルを費やして、個人や法人の太陽光発電設備設置を支援、3ギガワットの
発電を目指している。このほかに20年までに温室効果ガス25%削減を目標
に掲げているほか、保護技術やプロジェクトへの資金援助など、関連政策は山
とある。「従来のIT分野では政府の動向を気にすることはなかったが、クリ
ーンテックでは政府の支援策が発展のカギを握る」(プラブヘイカー氏)だけ
に、VCの間でもカリフォルニア州の積極策を賞賛する声が多い。
 こうした要素がうまく絡み合ってシリコンバレーは徐々に環境ビジネスのメ
ッカへと変貌を遂げている。しかし、研究開発段階のベンチャー企業がほとん
どであり、クリーンテック分野がITのように産業として成長するにはかなり
の時間がかかることは間違いない。「いつビジネスになるのかという議論が尽
きないが、最低5年は待つ必要がある」(プラブヘイカー氏)。ノベンティの
石井氏は「IPOよりはむしろ、大企業による買収が主なエクジットになるの
ではないか」と見る。
 大きな花が咲くのか。VCならずとも、関心は高まるばかりだ。



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