2008年7月25日金曜日

VCマネーの流入先:太陽エネルギー利用の最前線、画像ギャラリー



http://wiredvision.jp/news/200807/2008072523.html
2008年7月25日Alexis Madrigal
サンフランシスコ発――米国では政府の支援にむらがあるが、太陽エネルギー利用は世界中で爆発的に広がっている。気候変動とエネルギー価格上昇に対する懸念から、太陽の力を利用する技術の効率を上げ、その種類を増やすことに、何十億ドルもの資金が投じられているのだ。ここで言っているのは、新しい太陽光発電パネルのことだけではない。素材から製造工程、太陽の追跡装置に至るまで、すべてが見直されている。15日(米国時間)から17日までサンフランシスコで開かれていた『Intersolar North America』で紹介された、太陽エネルギーを利用する取り組みの最前線をのぞいてみよう。

中国で大人気の太陽熱温水器
この奇妙なパイプは、中国のWesTech International Development社が製造する太陽熱温水器の一部だ。屋根に設置すれば、太陽の熱エネルギーを集めて内部の水を温め、魔法瓶のように保温してくれる。米国の住宅に設置されているのは、たいてい、もっと高価なシステムだ。しかし中国では、このように管内に閉じこめた水を温める単純なシステムが主流だ。価格の安さが中国国内での普及を後押しし、10軒に1軒ほどの割合で、こうした装置を設置していると見られている。そして現在、大きな生産能力を持つ中国企業は、この低コストの技術を米国にも紹介しようとしている。Photo: Emily Lang/Wired.com

回転して太陽を追跡
ソーラーパネルの配置とは、直射日光をできるだけ多く浴びるようにしたい日光浴のようなものであり、その目的にかなうのが、この回転するソーラーパネル台だ。太陽が空を横切っていくのに合わせて、円形のトラックに載った上部の構造が回転し、パネルがいつでも日光を正面から浴びるようにする。いずれもドイツのメーカーであるa+f社(写真)とRWenergy社はよく似たシステムを作っており、ソーラーパネルの効率が30%向上すると説明している。

ロボットによる製造
太陽光発電は長い間、もっぱら科学者や環境保護の理想主義者たちの領分とされていた。太陽エネルギーが世界で使われるエネルギーの1%に満たないのには、そうした理由もある。世界のエネルギー市場を少しでも変えるには、太陽エネルギーの業界が規模を拡大しなければならない。それも迅速に。ソーラーパネルのコネクターを製造するスイスMulti-Contact社のIan Chen氏によると、1つの有力な対処法は、産業の世界で常に実行されてきたこと――つまり、オートメーションだという。「ガレージでやっていた方法をそのまま踏襲するのではなく、規模を拡大しなければならない」とChen氏は言う。コストを減らすと同時に生産量を増やすには、オートメーションの工程をゼロから設計する必要がある。

太陽電池製造ロボット
米Adept Technology社が製造するこの機械は、マシンビジョンと真空を利用し、ベルトコンベアから太陽電池をつかみ取る。同社の法人向けマーケティング責任者Jay Sacharia氏によると、動きの素早いこのクモのようなロボット『Quattro』の価格は10万ドル以下だという。

9500万ドルを集めた「集中型のソーラーパネル」
今、見つめているのは、太陽エネルギーの未来かもしれない。米SolFocus社が製造する集中型のソーラーパネルは、高効率で太陽光発電を行なう小さな素材に、鏡を使って太陽光を集める。まず、後ろにある凹面の第1の鏡が、中心に後ろ向きについている小さな鏡へと光を集める。この第2の鏡が反射した光は、オプティカルロッドを通って発電セルに到達する。この装置を使えば、広範囲の光を集められると同時に、コストを抑えることができる。どの程度かというと、法人向け開発責任者Stephanie Southerland氏によると、「2010年までに化石燃料と同等のコスト」にすることが目標だという。こうした話に、投資家たちは想像力を膨らませている。SolFocus社は2度の資金集めを実施し、すでに9500万ドルもの資金が殺到している。

ソーラー・ステッカー
米Lumeta社が開発したソーラーパネルは、世界初の「ソーラー・ステッカー」だ。屋根作りや建設を専門とする同社が、設置のしやすさを考えて開発しただけあって、パネルの裏の紙をはがして平らな屋根に張るだけという単純さだ。台に乗せるタイプの従来型パネルより軽いという長所がある一方、屋根に密着させることから、最も効率の良い角度にできないという短所がある。最高業務責任者(COO)のStephen Torres氏は5月、ワイアードの取材(日本語版記事)に対し、この短所によって失われる発電量は5%ほどだと説明している。

柔軟な折り畳み式充電器
「ソーラーパネルのインテグレーション」とは長年のキャッチフレーズで、建物や製品に直接組み込めるソーラーパネルを意味する。今回のイベントでは、米Global Solar Energy社が、建物に組み込めるフィルム状の製品『PowerFlex Solar Strings』をアピールしていた。同社によると、細長い太陽電池1メートルで70〜90ワットの発電ができるという。Global Solar社は、[携帯型の]ソーラー充電器にも技術を応用している。写真のものは6.5ワットの発電ができるタイプで、価格は約100ドルだ。法人向け製品の責任者Charles Gambill氏によると、2、3時間で携帯電話を充電できるという。そして何より、映画『WALL・E/ウォーリー』に出てくる折り畳み式の充電器にそっくりだ。

Applied Materials社が業界を支配する? Intersolarが『SEMICON West』と同時に開催されたことを考えると、半導体業界の関係者がIntersolarの展示会場を歩き回っていたのも不思議ではない。驚いたのは、太陽光発電の市場に参入した米Applied Materials社に関する騒ぎだ[半導体製造装置メーカーである同社は2006年に、太陽電池事業への参入を開始。2007年11月にはイタリアの太陽電池製造メーカーのBaccini社を買収した]。Intersolarに参加していた米SolarFrameWorks社のNathan Singsen氏は、「Applied Materials社はおそらく、太陽光発電の業界全体を支配するだろう」とまで言った。Applied社で薄膜部門の責任者を務めるChris Beitel氏も、たぶん同意するだろう。半導体生産の規模拡大と最適化におけるApplied社の経験は、太陽光発電における同様の問題にそのまま応用できると、Beitel氏は主張する。「われわれなら新たな規模に到達できる」その証拠にApplied社は、写真の巨大なフィルム状のソーラーパネルを披露した。米Signet Solar社がApplied社の技術を使って製造したものだ。この技術を利用する企業は、ほかにも複数あるようだ。Beitel氏によると、Applied社はすでに計30億ドルの契約を結んでいるという。

新素材をナノスケールでテスト
太陽光発電業界へのベンチャー投資が増えているため、この業界の企業には、革新をもたらす可能性のある新素材に資金を投じる余裕が生まれている。新素材開発には、米Agilent Technologies社の『NANO Indenter』が役に立つ。非常に薄い素材の硬さや伸縮性といった力学特性を測定できる装置だ。ナノスケールで素材に圧力を加え、圧痕の形や性質を評価する。

シリコンをレーザーで切断
パソコンや電話のチップを作るには、シリコンウエハーを細かく切断しなければならない。太陽電池の製造にも同様の工程が必要だ。チップメーカーはかつてダイヤモンドの刃を使用していたが、ドイツのJenoptik社によって新たな方法が開発された。熱レーザーで切断する方法だ。Jenoptik社によると、レーザーはダイヤモンドより切れ味がよく、材料の無駄が少ないという。Photo: Emily Lang/Wired.com

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